曲54 四種換弦方法的練習(2017/07/08更新)

・2017/07/08更新(「音の長さと弓の長さ」のリンク追加)

私の訳書『張韶老師の二胡講座:下巻』に収録の「曲54 四種換弦方法的練習」について、2017年6月時点での私の個人的見解をまとめます。
張韶先生ご自身の見解ではないので注意してください。

まず、換弦の基本は「換弦」を参照してください。

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さて、この換弦の練習曲をある程度の速度をもって行いたいとき、動きを分析するうえで押さえておきたい3つの視点があります。

A)順向か逆向か
外弦→内弦、あるいは内弦→外弦の移動と、拉弓推弓の組み合わせは4通りあります。
このうち、反時計回り(内弦拉→外弦推、外弦推→内弦拉)の動きは、身体の仕組みとあっていて比較的やりやすいです。
これを「順向」といいます。

時計回り(内弦推→外弦拉、外弦拉→内弦推)の方は「逆向」です。

『張韶老師の二胡講座:上巻』102ページの訳注1に写真を載せて詳しく説明しています。

B)4つ1まとまり(16分音符で1拍単位)で考える
例えばD調で1155なら、内内外外(つまり2:2)、1555なら内外外外(つまり1:3)と考えます。

『張韶老師の二胡講座』で参考資料としてあげている『全国二胡(業余)考級作品集詮釈』の考え方です。

C)弓のどの部位でひくか(弓段)
弓には弓尖から弓根までいろいろな部位があります。
『張韶老師の二胡講座:上巻』87ページの図がわかりやすいでしょう。

一般的に、私個人がラクなのは、腕を自然に身体の側面に垂らした状態から肘を曲げた位置にして、その状態でもつ弓の位置です。

右腿より外上空?と言えばいいのか、弓の部位でいえばまんなかへんくらい・・・?

ただ、個人差もあるでしょうし、換弦前後のフレーズなどさまざまな条件によって異なってくると思います。
ぜひ、弓のいろんな部分でひいてみて、その時々の自分のベストポジションを見つけて下さい。

***

さて、「四種換弦方法的練習」の4種類の換弦についてまとめていきます。これはあくまでも現時点での私の考え・私のやり方で、将来変わる可能性もありますし、また弓の種類、弓の張り具合など、身体的条件によって異なる可能性もあることをご承知下さい。

便宜的に、譜面を以下のように分けます。
・「ア」1~3行目
・「イ」4行目
・「ウ」5行目
・「エ」6行目
・「オ」7行目
・「カ」8行目

1)大臂主动换弦(上腕主導の換弦)
「主动」は「自発的・能動的である/主導的である」という意味なので、日本語訳は「主導」にしています。たまたま読みが「しゅどう」で同じですが、誤訳ではありません。

これが使われているのは「ア」「ウ」「オ」です。まず「ア」から説明します。

「ア」 Aからみると第1~5小節が順向、それ以降が逆向です。しかし、Bの分析より、綺麗に2:2に分かれていますので、規則的な動きで換弦することが可能です。

上腕主導というのは、こんな感じのわずかな動き(前後動)です。

この動きによって、弓を上から見た場合、ごくわずかですがこのような動きになります。Aは擦弦点です。

このわずかな動きを換弦のサポートにします。

(2)小臂手腕主动换弦(前腕・手首主導の換弦)
「イ」の動きはAでは順向ですが、Bに従って分析すると、内:外=3:1なので、内弦が主であることがわかります。つまり、弓はほとんど右手中薬指によって張りを保っている状態になります。

なので、たまに外弦に行くときにも、あまり弓を緩めず、比較的張りをたもった状態にしておきます。ただこのとき、弓を持ち上げないように注意し、弓棹に琴胴に貼ってあるテンペンに沿って動くようにします。

【補足】ただ、いまの私には張韶先生の書いた「小臂手腕(前腕手首)」主体というのがいまいちよく分かりません。すみません。現時点では、(3)よりも右手中薬指の動きが少ないとだけ理解しています。

では「イ」の裏返しである「ウ」はどうでしょうか? 「ウ」は逆向、外:内=3:1の外弦主体の動きです。つまり弓は指の支えがなく、弓の自重でテンペンに沿って落ちている状態です。

この状態で、たまに内弦に行くとき、あまり右手中薬指を使うと弓が暴れがちです。なので、指の動きは最小限にして、わずかな弓の張りと、わずかな上腕の動きのサポートのバランスを取りながら換弦します。つまり(1)に分類されると思うのですが、必ずしも上腕が主導の動きでは無いのでは・・・とも感じます。

実は私はこの動きがとても苦手ですので、この分析が間違っているかもしれません。いま、探求している最中です。

(3)手指主动换弦(指主導の換弦)
「エ」は順向で内外内外とかわりばんこに動いています。弓の動きは最小限におさえ、右手中薬指主体で動かします。

「エ」の裏返しである「オ」の比較について。「オ」は逆向、外内外内です。ただ、これは上記補足で触れた「ウ」よりさらに弓が暴れがちです。なので、指の動きのみならず、上腕の動きも必要最小限にするのではないかと思っているのですが、しかし、私はこの動きも苦手なので、いまは探求している最中です。

(4)指腕结合换弦(指・手首を連動させた換弦)
「カ」は前半8~9行目(第1拍の表拍→裏拍が順向、第1拍最終音→第2拍が逆向)と
後半10~11行目(前半の反対)で分かれています。
また表拍が長い8、10行目と、裏拍が長い9,11行目があります。

拍の長短の差が大きいので、非常に難易度が高いです。

まずは換弦練習の前に、「開放弦」「換弦無し」で練習します。

この時の注意点ですが、一般的に弓の長さは音符の長さに比例します。下図では、ゆっくりと 1 11 1 11(全角は4分音符、半角は8分音符)とひいたときの弓の動きを上から見たところの概念図です。最初は弓の左半弓、次は弓の右半弓を使い、8分音符で使う弓の長さはだいたい4分音符の半分の長さになります。

一方、スピーディに「1 11 1 11」(全角は8分音符、半角は16分音符)とひいたときの弓の動きですが、こちらのほうはあまり比例していません。音価を変えないという前提ですが、短い音符はなるべく短めのほうがキレよくひけます。

※このへんのことは「音の長さと弓の長さ」も参照してください。

さらに、1 11 1 11(全角は4分音符、半角は8分音符)の動きの動力源の基本は、胸や肩から伝わってくる動きですが、ただ、細かい「 11 」部分では、指の動きを少し使います。

とりあえず鉛筆でやってみます。

上の2つの動作はとても細かいものです。両者を重ねてみます。

この指先のわずかな動作をプラスすることで、よりコントロールされた動きをすることができます。

これが、張韶先生のいう「指腕结合(指と手首の結合)」の「指」の動きだと現在解釈しています。

もうひとつ注意すべきは冒頭のc)、つまり弓のどの部位でひくか、です。
特に弓根近くで十六分音符など細かい動きをするときは、あまり弓根に寄せすぎると窮屈な動きになります。
つまり、前から見たときの中心軸からの右手の距離です(下図左)

そして、もうひとつ見落としがちなのが、横から見たときの擦弦点と自分との距離です(下図右)。

前者は、時と場合によってかなり自由に選択することができます。

一方後者は、ふつうはいつも同じ距離です。でも、この距離をきちんと意識するのとしないとでは動きに変化が出てきます。
少なくとも私はそうでした。

私は、アレクサンダーテクニークの学校で、由香先生にそのことを指摘されました。
ただ、「あなたの右手は自分の身体より前で動いているよね?」とおっしゃったのです。
(2017/06/03レッスン)

いま思い返すと、二胡の恩師である杉原先生は、特に身体から離れて動く右手運弓について、「車幅感覚」が必要だとおっしゃっていましたが、由香先生のおっしゃっているのはまさにそれではないかと。

これまでの私の右手の位置感覚は、↑の図でいう黄色の範囲内でした。
前後、特に自分より前方の「車幅感覚」が私に欠けていて、そのせいで、とても窮屈に運弓していたのです。

それを、事実に基づいてもう少し前方、つまり、楽器を含めての位置関係を捉え直して、オレンジの範囲で考えることで、手が以前より自由に動くことができたのです。

ボディマッピングだけではなく、楽器そのもののマッピングの重要性に気づかされたレッスンでした。

それはそうとして、話を戻します。
この練習曲の「カ」部分がなぜ「指腕结合换弦」(指・手首を連動させた換弦)とされているのかについてです。

現在、私が考えているのは、指腕结合换弦(指・手首を連動させた換弦)というのは
換弦をしない状態で上記のすべての要素が絡まってくるので、
この時点ですでに指・手首の連動が必要なのではないか、ということです。

逆にいうと、指・手首の連動というのは、単に換弦動作のみに関わる動きではなく、
上記の換弓動作にすでに「指・手首の連動」という要素が内包されているのでは、ということです。

ただ、これはいまの私の推測に過ぎないので、また考えが深まったら改めて更新いたします。

***

なんだこいつ!

ざこか・・・(という感じで私を見ているようだ)

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