試行錯誤してます
2019年3月6日、いつもの天王寺区民センターで「二胡を楽しむワークショップ・左手編」を開講しました。
実はこのワークショップは、2018年9月5日以来、2回目の開講になります。
内容としては、体幹と右手(右腕)にスポットをあてた「右手編」の続編で、「左手」を題材に、主に前腕・上腕から指の構造や動きについて、二胡演奏の動作を関連づけながら学びます。
今回、2回目になるときに、ちょっと順番を変えました。初回の左手編は、まず楽器を置いて必要な部分のボディマッピングを学び、それから後半で楽器を出していただいて、前半の知識を演奏に関連づけていく、という構成でした。
それを、今回は最初から楽器を出しておいていただいて、ボディマッピングの知識を、なるべくこまめに演奏に結びつけていく、という試みをしてみたのです。
その結果、学んで、ひいて、学んで、と交互にやるため、そのたびに楽器を床や会場の隅に寄せてる机においたりと、ちょっとせわしなくなってしまったかもしれません。
いろいろ試行錯誤してますが、「伝える」ってほんとうに難しいことですね。
ワークショップは「イキモノ」だ!
なんどか書いていますが、「セミナー」ではなく「ワークショップ」と銘打っていることもあり、座学ではなく、実際に自分の身体を使った体験を重視しています。
で、「ワークショップ」って、ほんとうにイキモノだな、と感じた出来事がありました。
それは、みなさまが「手首」の骨にすごく関心を示してらっしゃったことが、今回、ビンビン私に伝わってきたことです。
昨年9月にやった初回の左手編でも同じように、ある作業をしたあと、手首の骨の様子を見ていただいたのですが、なんか、今回の方が、皆さんの反応がダイレクトに感じました。
参加なさっている方も違うし、時期も違うし、私自身も毎日変わっています。それによって、たとえほぼ同じ内容のワークショップでも、毎回雰囲気は変わるんだなあ、と。
ワークショップってイキモノだな、と思いました。
手首の仕組みも、とっても面白いです。「蝶番(ちょうつがい)状」ではなく、あのような「石垣」状になっている必然性があるのです。
今後、なんか二胡の動きと関係する形で取り上げることができたらいいな、と考えています。
「熱意」と「共感」
もう一つ、今回しみじみと思ったことがあります。それは、「熱意」と共感です。
最後に、参加者の方々に感想をシェアしてもらう時に思いました。
何人かの方が、今回やったことに関する質問を投げかけて下さったり、休み時間にスケルトム君やボーニー君を眺めたり触ったり、終了後にちょっと残って、講座とはまた別の、いま練習していらっしゃる曲のやりにくいところを質問してくださったり。
好奇心を持って学ぶというみなさんの熱意が私にも伝わってきて、なんとかこの思いに応えたい、という気持ちを一層強くしました。
もうひとつの「共感」も、最後のシェアの時に、ある方が述べた感想に対して「私も」という声がいくつもあった時に感じました。通っている教室も住んでいるところも、二胡歴やレベルも様々な方々が、同じことに対して悩んだり困ったりしている。そしてそれをシェアすることで、「私だけじゃないんだ、同じことが苦手な人もいるんだな」という共感が生まれる。
そして、それは私もかつて悩んでいること、あるいはいまでもなんとかしたいと思っていることなんです。
次の「ワクワク体験」へ
ほんとうに、やりたいことはいっぱいあります。それが一太郎文書(いまこれを使っている方がどのくらいいらっしゃるだろうか…?)にたくさんアイディアがたまっていきます。
が、それらをばっさばっさと取捨選択して、1回分のワークショップに組み立てる作業は、とってもとっても大変です。
あれもこれも何もかも伝えたいのです。でも、時間は限られています。
ほんまに悩ましい・・・・
しかし、悩んで悩んで「ああもぉ~~~」ってなったときに、ちょっと立ち止まるようにしています。
自分はなぜこの作業をやっているのか。
それは、
二胡をひく方々に必要な身体のしくみを伝えることで、多くの人がひきたい曲をひいて楽しめるようになれば
という大きな望みがあるからです。
「望み」は、いま私がアレクサンダーテクニークを学んでいるBODYCHANCEがとても大切にしていることです。
この望みにこまめに立ち返ることで、いましんどくても、それが将来の喜びにつながることを思い出す。
このプロセスは、ついつい寄り道をしちゃったり、腰が重くて逃避しちゃったり、どうでもいいことに夢中になってやることを忘れちゃったり、という自分が、なんとか作業をやりとげるための非常に大きな原動力となっています。
恥ずかしながらそれが毎回成功しているわけではないのですが、しかし、立ち戻ることができたときは、盛大に自分を褒めてあげようと思っています。
ということで、いま一生懸命4月の「楽器編」の準備をしているのですが、あれもしたい、これもしたいという貧乏性が災いして、なかなか内容を絞り込めず、予想通り四苦八苦しています。
そのたびに、私は「ワクワク」を思い出します。
二胡をひく方々に必要な身体のしくみを伝えることで、多くの人がひきたい曲をひいて楽しめるようになれば
これです。覚えといて、自分!!!
ほんとうに、ご参加下さったみなさん、ありがとうございました!
何人かの方々は、また「楽器編」で再会できることを楽しみにしています。
今回、残念ながらむりな方も、また来年やる予定ですので、ちょっとお待ち下さいね。
(画像は加工しています)
なお、この「二胡を楽しむワークショップ:左手編」に興味を持たれた方は、ぜひ、「左手編」の前編である「二胡を楽しむワークショップ:右手編」を先に受講なさることをお勧めします。
まだチラシは作っていませんが、もし3人以上お集まりいただけたら、9月4日(水)午後に「右手編」を正式に開講する予定ですので、興味のある方は「こちら」までお問い合わせ下さい。
今後の予定ですが、来年2月に「左手編」再開講、3月に「楽器編」再開講、そして4月に新しいテーマのワークショップを開講しようと考えております。まだ部屋が予約できていませんが、詳細が決まり次第、通知したいと思います。
以下は、ご参加いただいた方々の声です(掲載可の方のみ)。
※がついている箇所については、私の方でコメント末尾で補足しています。
☆ばんび様
回内(かいない)、回外(かいがい)という言葉ははじめて知りました。
まだ慣れてなくて時々ここを使っていないので、この動きを二胡にもっととりいれて
ひじと手首を自由に、音楽も自由に弾きたいと思います。
P.S. 親指を楽にすると回内回外が動きやすいと感じました!(※)
【いのうえから補足】
※回内回外の動きに親指は直接の関係はないのですが、身体全体では、どこかを固めると、どこかが動きにくくなるということがあります。もし、両者が離れていたとしても、です。
このことは、おもに「右手編」でやりましたが、いろいろな日常動作でも実感することができます。
☆ぐぅ様
①印象に残った内容
指の長さ、こぶしから指ははじまっている(※1)のが新しい発見でした。回内、回外を使う意識しようと思います。
親指フリーも気をつけたいと思います。
②今後やって欲しい講座
簡単な曲を使ってのレクチャーetc.
【いのうえから補足】
※これ、ごめんなさい、ほんとうの指の始まりは、石垣状の手首の骨に接して伸びている、手のひらの中の骨(中手骨)です。でも、先に拳の関節の説明をしたとき、「ここから始まる」と確かに言うてしまいました。「わちゃー」と頭を抱えて反省しました。今後は気をつけます!!! このようなフィードバックをいただくことで、次のワークショップに生かしていきたいです。
☆森様
①印象に残った内容
指がこぶしのところから出ている(※1)という意識で、かなり指を自然に動かすことができるようになりました。
②今後やって欲しい講座
「音程をよくする」というテーマでセミナーして頂いたら嬉しいです(※2)。
【いのうえから補足】
※1 すみません、これも上と同じです。ただ、指を動かすとき、拳の関節(中手指節関節)での動きが最も機敏に動くため、ここの動きを主にすると動きがよくなります。
※2 次回「楽器編」での知識が、直接ではないですが、間接的に音程に関わってくるかな、と思っています。
☆あず様
①印象に残った内容
基本的な左手、左腕の動きを知ることができてよかったです。右手の復習も少ししてくださって、その続きで左手に入れたので、右手のことを思い出しながらできました。
今後はフレーズごとに思い出して弾いて違いを確かめてみます。ありがとうございました。
②今後やって欲しい講座
各種ビブラートのワークショップ(※)
【いのうえ補足】
※ 今回の「回内回外」の動きを知って、「こんな動きもできるねんな」と思うと、最も使用頻度の高いビブラート「滚揉(いわゆるバイオリン風ビブラート)」の助けになるかな、と思います。
☆SS様
先生 今日もありがとうございました(※)。
【いのうえ補足】
※ こちらこそ! みなさんが参加して下さればこそ、私も、ワークショップを開く勉強ができるのです。みなさんにほんとうに感謝しています。
☆KAGEKO様
左手というか左腕の仕組みに、またまた目から鱗の楽しい時間を過ごさせていただきました。前腕の骨が2本あること、小指が肩からの骨と繋がっていること(※1)、そして一番の驚きは拳を曲げた時の曲がる箇所…。これを知ることにより曲げやすくなったような気がします。
あと、指が長くなったような錯覚というか感覚も芽生えました(※2)。 次に指と指の間隔、ただ広げるのではなくずらすというやり方も、今までも多分そうやってるとは思うのですが、改めて意識して実際に体験し、その理想的な形を自分の脳にインプットさせることができたのは、自分にとってとても良かったです。 ぼんやりと「指が曲がっている」、「頑張って指を広げる」と思っているのとでは、二胡に取り組む意識がだいぶ違うと思います。 実際に二胡を弾く時にどれだけ活かせるか、そもそも覚えていられるのかf^_^;というのがありますが、意識していきたいと思います。
また、小指の苦手な動きへの、これもまた目から鱗のアドバイスもありがとうございました。ちょっとまだ練習できてないのですが、譜面には書き込みました。頑張ります!
次回4月も楽しみにしておりますので、どうぞ宜しくお願いいたします。
【いのうえから補足】
※1 胴体からのサポートを受けているということですね。
※2「指が長くなった」というのはたぶん錯覚でも感覚でもなく、これまで「指」と思っていなかった部分も指だと言うことが分かって、認識が変わったためかなあと思います。
☆あっぷる様
①印象に残った内容
・小指の重要性
・小指の可動域が大きい事
・参加者の大半の方が小指を苦手としている事
・親指の役割
・手の骨がどうなっているか
・運指の指を縦向きにする理由が握り拳の先の形状にあった事(※)
・指のタッチ、押さえ加減について
今回の講座には、今まで深く考えずに使っていた左手について、骨の形や腕との繋がりも含めて、どのように使えば、体に負担なく演奏が出来るかのヒントが沢山ありました。
身体の形状に合わせた楽な弾き方が、良い音色に繋がるという事なのですね。
②今後やって欲しい講座
4月の楽器編は、参加出来ないので、次回の開催を希望します。
中国人演奏家が曲を弾きながら解説するyoutubeがありますが、中国語がよくわからず、どんな解説をしているか知りたいです。あ、でもこれは個人レッスンでお願いした方が良いかもしれませんね。
【いのうえ補足】
※ これは、ニンゲンの身体の仕組みから来ています。第3関節を曲げた状態で指と指の間を開くと、指先が集まります(このブログの「指の話2 指を『開く』とは」を参照してください」)。これは、ニンゲンがある程度の大きさの食べ物をつかむのに都合がいい仕組みです(小さいモノだったら指と指の間を開かずに「つまみ」ますよね)。食べ物を口に持ってきて、食べる。生きるために必須の動作を、やりやすいようにしているのです。素晴らしい!
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