ビブラートの話-2

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●曲げてるのはどこ・・・?
●曲げるだけでなく・・・?
●曲げたらどうなる・・・?

この文章は、ビブラートの話-1 の続きです。

曲げてるのはどこ・・・?

さて、ビブラートの話-1 で書いたように、二胡の3種類のビブラートのうち、少なくとも滚揉と滑揉の2つは、弦の長さを変えることで音の高低が変化することが主眼です。

以下、バイオリンビブラートをもとにした「滚揉」について話を進めます。

左の写真は通常の状態、右の写真は長さを変えた状態です。

このとき、指の弦に接している関節(この名称はいろいろ言いたいことがあるのですが、わかりやすいよう「第1関節」とします)が、より曲がっています。

しかし、これは「曲げてる」のではなく「曲がっている」というのは「ビブラートの話-1」でお伝えしました。自動詞と他動詞の違いです。

では、指ではないならどこが曲がっているのでしょうか。

それは、手首の関節です。

曲げているだけではなく・・・?

さらに、付け加えておきたいことがあります。

手首は、ただ曲げているのではありません。多少、回転運動も入っています。

というのは、指は弦に対して、やや斜めになっているからです。

もし、ただ手首を下に曲げるだけだったら、弦を指から外さないと無理です。それがABのうごきです。

A

B

もし、指を斜めに当てている状態で手首を曲げようと思ったら、さらに回転運動が入ります。C、Dを見てください。曲げたとき、時計の盤面が見えますよね。これは、手首の回転が入ったからです。

C

D

まとめますと、手首の動きは、

・主要な動き:曲げる運動(屈曲)

・副次的な動き:回転運動(回外)

となります。

そして、手首を回転させるのは「ひじ」です。

ひじそのものを動かすのではなく、ひじにある関節を動かして、尺骨を軸に橈骨を回転させることで、手のひらの向きを変えるのです。

だめだ、どうしても地鶏・・・もとい、右手でスマホもって左手の回内回外の自撮りができないので、写真は掲載しないのですが、肘を動かさずに回内回外ができるということは、自分で実験できます。

左肘を軽く曲げ、肘頭(肘鉄するところ、曲げたときに肘が一番でっぱってるところ)を右手で軽く触れます。その状態で、いわゆる「キラキラ星の手」をやってみてください。手のひらを自分の方に向けたり地面の方に向けたり、ヒラヒラ回転させるのです。

すると、肘の位置はそのままで、ヒラヒラできることが確認できると思います。

※回内回外については、「二胡を楽しむワークショップ:左手編」でもとりあげました。

来年に再開講する予定です。

曲げるとどうなる・・・?

そして、手首の関節に曲げる(+ちょっと回転)の動きが生じると、指と弦との距離が近くなるので、指の第1関節がくにゃっと曲がります。

ここで、もし指を固めていると、弦をぎゅっと押してしまうのです。

↓最初の状態(以下の手の状態は、写真を撮りながらやっているという制約上、普段の演奏状態と異なる可能性があります)

くにゃ↓

↓もし指がつっぱったままだと、手首を曲げたときに弦を押してしまう

つまり、弦に接している指自体を「曲げる」のではなく、手首を曲げることによって、弦と指との距離がかわり、その結果、指が「曲がって」、弦(振動している弦=有効弦長)の距離が短くなり、音程が上がる、ということです。

そこで、まず二胡を持ってビブラートの練習をする前に、簡単に手首だけを動かしてみましょう。(これも、写真を撮りたいのですが、自撮りでは無理なので掲載できませんでした)。

1)まず、二胡をもつように左肘を曲げて、親指と人差し指の指先が触れあうくらいに軽く手を握ります。

2)そして、招き猫のように、手首をかるく上下に動かします。このとき、この動きに連動してビブラートが起こっている、とイメージしながら動かしてみましょう。

ビブラートに必要な動きなので、動きはほんのわずかです。

水泳前に行うような、ただ手首を動かすための体操ではありませんから、ブンブン振りまわす必要はないです。

また、水泳前の手首運動だとあまりにも指先が脱力しすぎなので、指先で弦に触れる二胡の動きとはちょっとかけ離れすぎてしまいます。なので、かるく指先がふれる程度に握ります。

やってみると、このような宙に浮いた状態で、この動きをビブラートのように、少しだけ、均等に行うことはけっこう難しいことが分かります。で、次ですが、

3)次は、右手の肘を曲げて、自分の胸部にかるく引き寄せます。左手の人差し指の側面を、右手の前腕に沿わせるように触れ、左手の親指を、脈をとるように右手手首に当てます。

すると、左手でかるく右手上腕を持つような形になります。そのうえで、さっきの2)の動きをしてみましょう。

空中でやるより、ぐっとやりやすくなったと思います。支点があったほうがやりやすいです。

つまり、右手が仮想の琴棹と弦ということになります(実際の演奏と角度は違いますけどね)。

これらの動きは、ぜんぶ手首の屈曲の動きです。つまり、回転運動(回内回外)は入っていません。しかし、ビブラートの主な動きはこれですので、楽器を持つ前に、ぜひやってみてください。

あ、やるときは、「あたまふんわり」を忘れずに!

もし、今後、うまく写真を撮れましたら、新たに掲載したいと思います。

「左手編」の基礎になる「二胡を楽しむワークショップ:右手編」を9月4日(水)13:30から開講する予定ですので、興味のある方は「こちら」までお問い合わせ下さい。

・関連リンク

ビブラートの話-3

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小さな動きも、ビブラートになる。

小さな段差も、枕になる。

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