●二胡を持つ前に
●二胡を持って
●選択する――習得したあとに
二胡を持つ前に
さあ、二胡を持ってみましょう。
この辺は、「ビブラートの話-3」と重複しますが、大事なのでまた書きますね。
まず、手を下に下ろしている状態から、まず「あたまふんわり」を考えて(ただ考えるだけ)、それからいつも二胡を構えているくらいのところまで左手を挙げます。
このとき、左手小指がリードするように挙げてみて下さい。
※このとき、肩をすくめたり、後ろにひいたりという、左手を挙げる以外の動作があれば、それを観察してみましょう。そして、自分がなぜそのような動作をしたくなったのか、考えてみて下さい。
で、「ビブラートの話-3」で右腕を二胡の琴棹にみたててビブラート練習したことを思い出してください。
今度は、ふつうに二胡を構えて、琴棹を自分の右腕だと思って、左手を動かしてみて下さい。
このとき、弦に指を置かず、右手も使いません(音を出さずに)。
右腕を琴棹に見立ててやっている時とは、位置などがちょっと違ってますね。
で、右腕で遊んでるとき、拳を上下させたら、声にビブラートがかかりましたよね。
ほんで、この状態で右手を使って音を出すと、やっぱりビブラートがかかります。
これが開放弦ビブラートです。
(「三門峡」の最初の音でこれを使うのを、一番最初の南京の先生に習いました)
二胡を持って①
●頻度――タンキング練習を思い出す
・なるべく大きな動作で(半音くらい変わるくらい)
全弓を4拍とします。4拍数えながらひいてみます
い ち に い さ ん し い
で弓の端から端までいく感じ。
で、一番動かしやすい指で練習します。
中指が一番動かしやすかったら、
い ち に い さ ん し い
♯7 7 ♯7 7 ♯7 7 ♯7 7
(♯7って音はないけど、7より高い音、という意味で使ってます)
てな感じ。これが四分音符。
次が八分音符。
い ち に い ・・・
♯77♯77 ♯77♯77 ♯77♯77 ♯77♯77・・・・
そして、三連符、16分音符と進んでいきます。
学生時代、クラリネットをやっていた時は、この調子でタンキングしていました。
ポイントは
①最初の音を出す前に、指を普段の7の位置より後ろ?にひきます。
これからの準備のためです。
※以下の写真は、二胡を床に置いて右手でカメラを持って写真を撮っているため、普段の演奏状態とはかなり異なります。
↓が後ろ?に引いた状態
↓普段の状態
↓曲げた状態
②動かす量やタイミングを均等に。
これは耳や目でも確認できますね。
③右手はしっかりと
ビブラートって、けっきょく本来の音の高さでないところを使っています。
本来は、本来の音の高さのところが、いちばん鳴りがいいはずです(→ワークショップ:楽器編)。なのに、中途半端な高さの音をなんども経過するし、さらに、ビブラートによって、多かれ少なかれ、身体全体がビブラートをかけないときよりもわずかに動くわけですから、それに振り回されないよう、右手はやや意識してしっかりめにひきます。
(④ちょっとサポート)
やりにくいときは、他の人、あるいは自分の右手(やりにくいけど)
●幅
これは、上下幅のことです。練習のときにはしっかりと上下に動かしますが、まずは自分がやりやすい幅から始め、動きに慣れたらいろいろ変えてみてもいいでしょう。
二胡を持って②
あとの練習はバリエーションです。
①最初に使った、いちばん動かしやすい指から、次に動かしやすい指に進む。
順番は好きなように。四指以外の一二三指で、「二胡を持って①」のそれぞれをできるようになる。
②指のすり替え。最初は換弓ごとに。
い ち に い さ ん し い
♯7 7 ♯7 7 ♯7 7 ♯7 7で、
ここで最後の♯7→7のときに
♯7(↓)
7(↓)はい!
って指を引き上げるとき、「はい!」のかけごえで、「次の指をおろすぞ!」と、次の指と気持ちの準備をします。
そして、次に「いち」と数えるときには、別の指が弦上にいてるわけです。
(↓はなってへんけど。このとき既に例えば人差し指や薬指になっているわけです)
慣れてきたら2拍ごととか、1拍ごとに指をすり替えてみましょう。
③幅などのバリエーションをつける
練習のときにはしっかりと上下に動かしますが、その幅をいろいろ変えてみます。
また、クレッシェンドに合わせてだんだん大きくしたり、デクレッシェンドに合わせてだんだん小さくしたり、小さく→大きく→小さく、と変えてみたり。長弓練習のバリエーションとしてもいいですね。
④小指
小指は、最初はひっつき虫で練習します。薬指に添えて、一緒に動かしてみます。
そして、徐々に一本でもできるようにします。
よく言われるのは、小指は無理をしない、ということです。「疲れたら休む」のも大切ですが、そのまえにとても大切なことがあります。
小指は、全身とつながっていること。
小指(というか他の所、他の指を使うときは)頭ふんわりを思い出すこと。
ほか、「指の話4 小指について」も参照にしてくださいね。
私個人は、二胡を習って数年のときに、小指は数本一緒に圧揉(弦を押すビブラート)で、と習ったような気がするのですが、のち、また別の先生から、将来の表現を考えたら、小指だけ違うビブラートしかできない、というよりは、小指でも他の指と同じビブラートができたほうが、表現の幅が広がりますよ、と言われて、練習し始めました。
すると、小指って、実はむっちゃ最強のビブラートをかけられることが分かったんです。
その最強ビブラートとは、
①小指以外の指(多くは二三四指)を総動員する
②上下動に、さらに圧弦をプラスする
ものです。
まず①ですが、理論上は一二三四全ての指を使えますが、一指を入れるとちょっと可動性が悪くなるので、実際には二三四指で同時にビブラート動作をします。
そして②ですが、理論上は揉弦動作+圧揉動作の比率は、10:0から0:10まで自在に変えられます。しかし、実際にはむっちゃ上下動をやっているのに、弦をほとんど押さずに動かすというのはなかなか困難です。だから、すごく意識的に力を制御しないかぎり、揉弦動作が大きいほど、弦を押す力も強くなります。
それを踏まえ、四指でビブラートをかけるときに二三四指を総動員し、ビブラート動作が上から下に向かうときに、全員で弦をぎゅと沈み込ませるのです。
弱い小指から、最強のビブラートができる。なんという逆転ホームランでしょうか。
選択する――習得したあとに
最後に、自戒を込めて。
おかげさまで、私もだいぶんビブラートができるようになりました。
よく、「気づいたらビブラートしてた」「自然にビブラートが入る」のが理想、みたいに巷で言われてて、私も、なんかなんとなくやってる状態になりました。
もし、「私もそうだわ」と思ったあなた。もしよかったら、どんな曲でもいいから「ビブラートをかけずに」なにかひいてみていただけますか?
なんと、当時の私は、それがすごく困難になっていたのです。
音階練習すら、油断するとビブラートを入れてしまっているくらいでした。
そして、そんな状態になった私は、ある日先生から「みんなおんなじビブラートになっちゃってるね」と言われたのです。
アレクサンダーテクニークを学んでいる今なら分かります。
習慣になって自動的にやっていること、そのとき、私たちは「意識的に選択」していません。なんとなく、やってるだけなのです。
そこに「音楽」はありません・・・(しつこいですが、自戒を込めていうてますよ・・・)。
私たちは、表現のために、ビブラートを使いましょう。
この曲の、この部分の、こんな表現に対し、
・こんな大きさで、こんな頻度で、こんなタイミングで種類のビブラートをかけよう
・あるいは、この音は、かけるのをやめよう
というふうに、意識的に選択していくのです。
さらに、長い音については、最初からかける、途中からかける、途中からやめる、さらにビブラートの強さ・幅の変化も加え、無数のバリエーションが存在しますよね。選択の余地がもっともっと増えるわけです。
表現のために、意識的に選択する。
それも、音楽をみずから演奏しようと試みるからこそ味わえる、醍醐味ではないでしょうか。
(再度繰り返しますが、以上のことは、私自身の自戒を込めて、記しておきました。)
*****
指一本だけでビブラートできる
指2本でもできる
3本でもできる