換弦の前に――内弦運弓

コンテンツ

●必要最小限のこと

●どこから動くのか

●どこから動き出すのか

なんか「トイレその後に」みたいな題名になってしまいましたが・・・

レッスン時(個人レッスンでもグループレッスンでも)はいつも、まず生徒さんに今日やりたい曲、やりたい箇所をお尋ねするところから始まります。

すると、異なる日の違う生徒さんから、ぐうぜん同じテーマについて相談されることがたまにあります。2019年10月がほんまにそうで、たまたま「換弦」についてレッスンする機会が多かったのです。

そこで、換弦についてツイートで何度かつぶやいたりしたけど、その中から今回は2019年10月28日のツイートをネタに書こうと思います。

必要最小限のこと

換弦の過去記事は現在(2019年11月6日)2つあります。

換弦

曲54 四種換弦方法的練習(2017/07/08更新)

うち、②の記事は、題名どおり換弦の種類が4種類あることに言及しています。

どの種類であろうと、腕の一部がそこだけ独立して動くことはなく(ニンゲンはつながってますからね)、「上腕/前腕/手首/指」、さらに腕の一部である鎖骨・肩甲骨(過去記事「腕のはじまり」参照)が連動して動き、さらに頭のてっぺんから足までが協調して動きます。

それらがうまく協調して動くために、なんども触れていますが(そして自分自身にもなんども言い聞かせていますが)、頭をふんわり脊椎のてっぺんに載せておくことが大切です。

(この「頭ふんわり@木野村先生」は換弦とかの二胡演奏だけでなく、日常のあらゆる動作の前に思い出したいことですね)。

それを大前提として、まずは、換弦の動作について考えてみます。

動作を考えるときに、BODYCHANCEの教習動画では、まず必要最小限の動き、つまり、なにをどうしたらその動作ができるか、ということを出発点にする、と言っています。

「書く」ならば、鉛筆の先が紙に接触する、とかそういうことです。

じゃあ換弦はどうでしょう?

今の私の考えでは、「何もしなかったら外弦に接している弓毛を、内弦に接触させること」が必要最小限の動きかな、と思います。

では、上記でふれたさまざまな箇所に動きの中で、いちばん小さな動作でできるのが、弓毛に直接触れている唯一の存在――中薬指の動きではないでしょうか。

まあ、中指がメインで、薬指がサブですが。

つまり、中薬指を、弦槽(コマに刻まれている溝のこと)の広さ分、つまりほんの数ミリの間を移動すればいいってことです。

指の、ほんの少しの動作でできます。

そのことを頭に入れて、下の2枚の写真を見てください。指先の小さな細かいコントロールがしやすそうなのはどちらでしょうか?

(写真を撮るのに、二胡を床に置いて、片手でスマホを保持するという無理な姿勢になっているので、ほんとうに演奏している状態とは細かいところで異なっているということをご了承ください)

A

B

二胡は、どんな指の、どんな腕の使い方をしても、弦をこすれば、とにかく音は鳴ります。

ただ、やりやすさにはいくらか差が出てくるかもしれません。

上の写真A、ちょっと赤線のあたりが窮屈そうですね。

ためしに、弓を持たなくてもいいので、写真のように手首を曲げた状態で、換弦するイメージで中薬指を「細かく」「素早く」動かしながら、自分の前腕や上腕・首など、身体のあちこちの状態を観察してみてください。

そのあと、手首をもとに戻して、もう一度同じ動きをしながら、自分の身体のあちこちがどんな感じか、観察してみてください。

なにか違いがあったでしょうか? 違いを感じられなくても別にかまいません。

次に、この2つの状態になるまでの、運弓の動きの違いを見てみます。

どこから動くのか

次に、運弓についてです。話が分かりやすように、拉弓で考えてみます。

どちらも、始まりは同じにします。

1 上腕・前腕とも身体の側面に沿ってぶら下がっている状態にします。

2 肘を曲げて、弓を持ちます。

ここからスタートです。

すると、Aの場合はこのような動きになります。

(これも、gifアニメのもとになった写真を撮るのに、二胡を床に置いて、片手でスマホを保持するという無理な姿勢になっているので、ほんとうに演奏している状態とは細かいところで異なっているということをご了承ください)

この動きの特徴は、前腕を固定して、手首から先だけが先行して動いていることです。

手首の関節のみを動かしているので、弓を持っている手の部分は円弧を描くように扇形に動こうとします。

(一つの関節だけの動きは、円運動になるためです→「曲線を直線に変える」参照)

さらに、この手首の動きは、指をぎゅっと握り込ませる傾向があります。

(手首の伸展(背屈)の動きは屈筋の腱を緊張させるため。「新・動きの解剖学」160頁)

拉弓の始まりでこの動きが起こると、握り箸や、小さい子が鉛筆を握り込むような感じになりやすいのです。

どこから動きだすのか

では、Bはどうでしょうか?

下のBの動画は、設定を少し変えて動きをゆっくりめに設定していますので、特に動き出す一番最初のところをよ~くみてください。

まず、動き出すのは前腕ですね。そのとき、弓を持っている手の部分は、まだ動いていません。

そして、ほんのわずかですが、すこし遅れてから弓を持っている手が動き出します。

まるで、前腕が腕をつれていくように・・・

(なんどもしつこくてすみませんが、これも、gifアニメのもとになった写真を撮るのに、二胡を床に置いて、片手でスマホを保持するという無理な姿勢になっているので、ほんとうに演奏している状態とは細かいところで異なっているということをご了承ください)

念のため、最初の2コマだけもgifアニメにしてみました。

この動き出しは前腕ですが、前腕を動かす、というより、手首を誰かが持っていく、という感じがします。

もしよかったら、誰かに手首のすぐ近くにある前腕の先端のぐりぐり部分(尺骨茎状突起と橈骨茎状突起)を軽く持ってもらって、拉弓の方向に動かしてもらってください。

すると、こういう動きになるんじゃないかなと思います。

前腕の先が楽器から離れだすと、まず上記のように弓を持つ手の部分がわずかに遅れてついていきます。

さらに離れると、上腕がゆっくり胴体から離れていきます。それに従って手首の曲り具合もどんどん大きくなるので、楽器に対する弓の軌跡は、Aのように円弧を描くことなく、直線に近い動きになるのです。

冒頭の「換弦」の話に戻ります。

Bの状態だと、指で弓を握り込まなくていいので、指はわりとフリーに動きます。その結果、内外弦の換弦動作が、より、やりやすくなるのではないかと思ったのでした。

ということで、もし内外弦の換弦がやりにくいなあと思ったときは、内弦運弓動作も見直してみてください。

さらに、換弦の際に「手元を見ようと首を極端に折り曲げてしまう」とか、「特に外→内の移動の際に、指と一緒に身体を後ろにひくように背骨を丸め、背を縮めてしまう」という動作が起きてしまう方もいらっしゃいます。

腕は胴体から構造的に独立してるので、脊椎は長いままでいて、頭はふんわり脊椎のてっぺんに載せておいて、手の細かい動作を間接的にサポートする体勢を、整えてあげてくださいね。

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屋根の上のねこを撮った! と思ったら、失敗だったにゃん。

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