今回、グループレッスンにご参加頂いている方からのリクエスト企画です!
このブログ「二胡を知る からだを知る こころを知る」の記事の多くは、現在学んでいるアレクサンダーテクニークの中で二胡に応用できることを中心に、備忘録もかねてブログに記してきました。
上記の理由から、二胡にかかわる様々なトピックの中で、これまで実際に身体を動かす「演奏」の方を主に取り上げてきたのです。
そんななか、「中国音楽」そのものについて知りたい、という声を頂きました。
最近は二胡の譜面も充実し、中国の曲のみならず、日本の唱歌や童謡、洋楽・邦楽とわず演歌、歌謡曲、ポップス、果てはクラシックなど、様々なジャンルの曲を演奏する機会もあります。
ただ、二胡は中国由来の楽器で、中国の音楽と切っても切り離せません。さらに、レッスンや演奏会をきっかけに、いろいろな中国曲に触れる機会もあるでしょう。
ということで、中国音楽についてちょっと取り上げようと思いますが、何より、あまりにもテーマが大きくて、とても私には手に負えません。
そこで、題名もそのままの『中国の音楽』(村松一弥著、勁草書房、1965年)という本を底本に、必要部分を補足していきたいと思います。
出版年より分かるように昔の本ですし、もしかしたらもっと適切な本があるかもしれないのですが、とりあえず私の手持ちで一番テーマにそったものがこれだったので、ご容赦ください。
なにかよい本があれば紹介していただければ助かります。
入門でしたら孫玄齢著『中国音楽の世界』(岩波新書)などがありますが、網羅的ではなかったので、『中国の音楽』にしました。
表紙と目次は文末に挙げます。
中国伝統音楽の五大類
まずは、中国音楽をざっと見渡すため、p171にある「中国伝統音楽の五大類」を挙げてみましょう。
1)民謡(民歌 mín gē)
2)歌舞(歌舞 gē wǔ)
3)語り物(说唱 shuō chàng)
4) 戯曲(戏曲 xì qǔ)
5) 器楽(qì yuè)
それらは、本書においては以下の順番で取り上げられています。
●戯曲(第三章、中国の民族歌劇「戯曲」より)
●歌劇・舞劇(第四章、中国の新民族歌劇(附――舞劇)より)
●民謡(第五章、中国の民謡と語り物より)
●語り物(第五章、中国の民謡と語り物より)
●器楽(第六章、器楽より)
このうち、なんといっても村松氏がいちばん重視しているのは民謡でしょう。
民謡は・・・各音楽形態の形成および、作家たちの創作の基盤となるいっぽう、それじたいもまた民衆と哀歓をともにして生き続けて来ているし、また近世いごは逆に戯曲や語り物、歌舞の音楽からも少なからぬ影響を受けているのである。
従って、民謡こそは中国音楽の特質を解明する核といっていいだろう。中国音楽の本質をつかむには、まず中国の一般大衆――社会の基層をなす人々――の中に生きてきた民謡の実態をつかむことが必要である。(171pより)
ということで、私もまず民謡を取り上げたいと思います。
民謡の種類――漢族の民謡
中国の民謡は、漢族の民謡と少数民族の民謡の2つに分かれています。
今回はひとまず、漢族の民謡の種類をざっと見ていきますね。
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漢族の民謡は、大きく4つに分かれています。特徴としては
・そのほとんどが1番目の仕事の歌か、2番目の恋の唄
・五音音階(中国では五声音阶 wǔ shēng yīn jiē)を使っているものが多い
だそうです。では、その4つを以下に挙げていきましょう。自分のための備忘録として、ページ数もメモっておきます。
1)仕事の唄(172p)
中国では「生活类(類)shēng huó lèi」の民謡などと呼ばれてます。労働の数だけあるといっても過言ではないのですが、村松さんが挙げているものを見てみましょう。
●打夯歌(dǎ hāng gē)胴突き唄(地固めのときなどにエンヤコラみたいに歌われる)
●号子(hào zi)荷役人夫や船頭、漁夫などがうたう「掛け声唄」
●栽秧歌(zāi yāng gē)田植え歌※
●纺织(紡績)歌(fǎnɡ zhī gē)糸紡ぎ唄、はたおり唄
●牧歌(mù gē)牛追い、馬追い唄(井上注:羊もあるんじゃない?)
●采(採)茶歌(cǎi chá gē)茶摘み唄
※ややこしいことに、「栽秧歌」には節によって「栽秧号子」(中国音楽詞典、490p)とも呼ばれるジャンルがあり、それは「号子」で、かつ、後に述べる「山歌」の要素もある。
なお、二胡曲にもよく取り入れられている「秧歌 yāng gē」(中国音楽詞典、449p)は、「歌」がついているものの、ジャンル的には「舞曲」に分類される。
2)恋の唄(174p)
中国では「爱情类(愛情類)ài qíng lèi」と呼ばれるそうです。大きく「山歌」と「小調」に分かれます。
●山歌 shāngē
即興的要素をもち、旋律の動きや拍子も一定しないものが多い。2拍子と3拍子が組み合わさったものなどもある。名前どおり、山間部でよく歌われる。
●小调(小調)xiǎo diào
日本の俗謡のようなもの。語り物や戯曲、器楽などの影響を受け、山歌よりも定形化されている。
3)叙事民謡(178p)
中国では「故事类(類)gù shi lèi」と呼ばれているそうです。
民間伝説、歴史的人物を歌ったもの。
語り物・戯曲音楽の萌芽ともいえ、ひとつの簡潔な旋律を何度も繰り返して物語を展開していくが、旋律と言葉が密接に結びつき、歌詞の内容に応じて音が変化していくなど語り物音楽に接近しつつあるものも少なくないとか。
歌われる区域が広いのも特徴。漢族の住んでいる地区ならばほとんどどこでも聞かれるものも多い。
4)革命民謡(213p)
中国では「新词类(新詞類)xīn cí lèi」と呼ばれるそうです。その多くは、在来の民謡の旋律に新しい革命的な歌詞をつけたもの(いわゆる、替え歌ですな)。
各ジャンルの実際の曲目などについては、また別の機会に述べます。
また、少数民族の民謡についても、改めてとりあげますね。
今回はとりいそぎ、ここまでにします。