前の投稿でもお伝えしたのですが、
左手の指の主な仕事は、あくまでも音の高さを変えること。
楽器をささえる役をこなすのは、あくまでも手の中でも人差し指の根元の一点です。
もちろん、それとは別の次元で、楽器に触れているものは
--弦の上に置かれた左手の指や、そして弓でさえも--
なんでも利用して支えることができます。
そういう考えによって動きがより自由になるということもありえます。
でも、最初のうちは、ひとまず一番シンプルな形で楽器を支えることに慣れることをめざすほうがいいでしょう。
というのは、支える仕事をすべて指に背負わせてしまうと、
開放弦や換把(ポジション移動)のたびにぐらついたり、
支えるために指が固定されがちになり、ラクに動かすことができなくなるからです。
特に、親指と人差し指の根元で琴棹を挟むクセが付くと、
なめらかな動きが得られなくなります。
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なぜかというと、親指にはたくさんの筋肉が付着しています。
数字は『動きの解剖学』のページ数で、自分のメモようです。
筋肉一覧(☆は外在筋)
・☆長母指屈筋(186)-短母指屈筋(188)
・☆長母指伸筋(187)-短母指伸筋(187)
・☆長母指外転筋(186)-短母指外転筋(189)
・母指内転筋(188)
・母指対立筋(189)
このうち、「拇指対立筋」は特に重要です。
母指のほか、小指にも対立筋がありますが、
すべての指に対して指先をくっつける器用さをもつのは母指だけです。
さらに、☆のついている「外在筋」というのは、手のひらの中に収まってなく、
筋肉のはじっこにある長い腱が手首の「手根管」という細い管を通って、
上腕の骨に付着しています。
つまり、この細い管のなかに、親指をはじめ、
他の指を動かす多くの筋肉がひしめきあっているのです。
さらに、「手根管」を通る筋肉の腱の部分には、
手のひらの中にあり細かい動きを微妙にコントロールする
「虫様筋」という小さな筋肉が付着しています。
(この筋肉について最初に出会ったのは『ヴァイオリンを弾くための身体の作り方・使い方』116pでした。
いま見直すと、他にもいろいろな筋肉名がありますが、これを買って読んでいた当時はぴんときませんでした。
でもこの筋肉は「虫かあ」とへんな感想を抱いたので、覚えていたのです)
そういう状況を想像すると、動かす必要のない親指に無駄に力を入れることで
他の指がいかに動きにくくなるかは、容易に想像がつくでしょう。
これを「親指を使ったらダメ」とか「親指は動かしたらダメ」とか
否定形でいってしまうと、身体が固まってしまいます。
なので、私は「親指は自由にしておく、フリーにしておく」という言い方が好きです。
時には、小指をおもいっきり伸ばすときなど、親指がピンと立ってもいいのです。
つまり、小指だけに無理をさせるのではなく、てのひら全体をのびやかに広げるという感覚です。
小指を使い終わったら、また親指を元に戻せば良いのですから。
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おなじねこだが目つきが違う