二胡がぐらつくー1

楽器の支え方の基本的な考えについては、別項「楽器の支え方」を参照していただききたいのですが、それでも、ひいているときに楽器がぐらつく・安定しないということがあります。

じつは私自身、この問題は解決していません。

いま通っているBodyChanceをはじめとするアレクサンダーテクニーク(AT)の教室でこの問題を何度でも質問したことがありますし、私も、楽器の位置が何かひきにくい位置に変わるのはいつか、そのつど「観察」し、原因を考えるようにしました。
(観察もATの大切な教えの1つです。コツは「批判を挟まずに観察する」ことですが、これについてはまた別の機会に・・・)

すると、いろんな原因が考えられることが分かりました。

●常にぐらつく
⇒特に初心者の方はそもそも楽器の持ち方が安定してないことがあるので、上記の「楽器の支え方」を参照に、まずは開放弦だけをひいて楽器を安定させましょう。

慣れるまでは、100円ショップなどで売っている滑り止めマットを左膝にひいて、そのうえに楽器を置くのも良いでしょう。
実は私も一時期、滑り止めマットを小さく切って、両面テープで二胡の底に貼り付けていたこともありました。
ただ、はがれたりして面倒くさいので、いつの日か使わなくなりました。

でも、楽器を触って間もないころは、楽器が倒れるのが怖くて左手親指でぎゅっと挟むクセをつけてしまうほうがのちのち困るので、マットをひくことで少しぐらつきをなくし、安心できるほうが利点が大きいかなと思います。

これは現時点での考えなので、そのうち変わるかも知れないですが・・・・。

●運弓(特に拉弓・長弓)のときにぐらつく
⇒拉弓の時は右手が楽器から離れていくのですが、それにつれて身体が右に傾き、楽器も右に傾き、楽器が倒れそうになるケース。

自分が右手を動かしているのはなんのためか。弓(弓毛)で弦をこするためです。その目的の焦点は弦と弓毛が接している「擦弦点」にあります(https://www.niko.ms/2017/03/03/post-366/)。
ここに意識を向けると、身体が安定することがあります。

身体の安定だけでなく、意識も多少かわる可能性があります。身体が右に傾いていくということは、意識のほとんどが右手に行ってしまっているためです。だから、運弓(右手)のことを考えると左手のことを忘れる、左手のことを考えると右手のことを忘れる、という現象がいつまでも抜けません。

わたしもまだまだそういうことがあるのですが、人間は複数のことが同時に出来ます。そしてどちらかというとそうことに苦手意識を持っている私も、そのことを確信できるよう、自分についての思い込みを直している最中です。このことについては、また別項で触れたいと思います。

●換弦(特に外弦から内弦への換弦)のときにぐらつく
⇒これは自分自身を観察しているときに気づいた現象です。

ふつう、楽器(琴筒)の方向は以下のようになっています。
(上から見た図。丸は胴体、四角は琴筒)

二胡の位置(上から)

しかし、外弦から内弦に移る時に、右手中薬指に力を入れすぎると、楽器自体がガクンとうごき、琴筒のおしりの部分がふれてしまって、琴筒の向きが自分と平行になってしまうのです。

これは、換弦の際に不必要な力を抜く方向で改善中です。

●下把(高音)位の時にぐらつく
楽器を支える場所の1つである左手人差し指の根元の位置は
琴棹のどこにあるか、ということに着目します。

上把位=低音の時(下図左のA)と比べ、
下把位=高音のときは左手がかなり琴筒に近づきます(下図右のB)。
つまり、支点より上の部分のほうが長くなるということになります。

支点より上の部分が長くなるということは、つまり、長くなった分だけ重くなるということになり、
不安定になりがちです。

私は「空山鳥語」の三連符の連続のところを練習していると、このせいでしんどくなっているということを二胡の先生に指摘されたので、琴棹の角度をいつもより少しだけ垂直に近くしました。

しかし、年月が経つにつれ、あまりにも垂直に近づきすぎてしまい、逆にバランスを欠く結果になったのです。これは、アレクサンダーレッスンを受けたときに自分で気がつきました。

何年も経つと、当初のやり方が徐々に自己流に変化したあげく、却って逆に妨げになったり、逆に自分の方が変化して当初のやり方が合わなくなったりします。私の場合、もしかしたらその両方の面があったのかもしれません。

●本番のときにぐらつく
⇒いまのところ考えられる原因は2つあります。(1)は外的な要因、(3)(4)は心理的な要因、(2)はその両方を兼ね備えています。

(1)裏地で滑る
本番のときはちょっとおしゃれ着を着たりするので、特に女性の場合はつるつるの生地(なんていうのか失念しました)の裏地がついていることが多いです。これがすべるので、練習のときに気にならなかった楽器のぐらつきが、妙に気になることに気がつきました。
これに関しては、イライラせずにただこの状態を受け入れ、楽器がずれたら直すというようにしました(後述)。

(2)手汗をかいて滑る
緊張によって、いつもとは違う状態になることはよくあります。楽器によっては、手汗をかくことで滑ったり、逆に汗でひっかかって滑りにくくなったりします。これについては、別項で説明します。

(3)楽器の角度が微妙に変わる
もしかして本番のときだけ、緊張で違う角度にしているのではないか、とアレクサンダーテクニークの先生から指摘されました。
このことに関して、私自身の「気づき」はまだ無いのですが(そのうち気づくかも)、人によってはそれが原因になっているかもしれません。

(4)股関節が緊張して固まっている
これもアレクサンダーテクニークの先生の指摘です。
手ではなく、楽器を載せている股関節の方に着目したこのご指摘には、目からウロコの感がありました。
これは、股関節が緊張しているな、と軽く自覚してあげる(必要なら軽く股関節を動かす)ことで解消します。

***

以前は、二胡のぐらつきを嫌うあまり、本番の時のみ、無意識に左膝のつま先を立てるようにして楽器を安定させようとしていました。
しかしこれでやっていくと、なんかの拍子に膝がガタガタ震え、逆に不安定になることにも気づきました。

で、このクセ+この弊害に気づいたあと、クセ自体を頑張って直そうとしていたのですが、最近はあまり深刻にならず、気づいたら踵を下におろす、くらいに留めたいと思っています。あまりにもクセを気にしてしまうと、逆にプレッシャーになってしまうからです。

そのうえで、現時点での私の結論、というか極論は、必要ならそのつど直せばいいのでは、ということです。

このことをいろんな先生に相談しましたが、きっかけはある先生がおっしゃった「それはなかなか面白いテーマですね」という一言。

楽器がぐらつく、という現象に対し、私は間違ったこと、改善すべきことだと思っていました。しかし同じ事が、この言葉を聞いて「面白い」「興味深い」ことなのかな?と思った時、ちょっと意識が変わったのです。

また、同じくアレクサンダーの先生がおっしゃった「正しい姿勢なんてない」という一言も、私の意識変化につながりました。

安定させるということは、「固定する」ということにつながりがちです。もちろん、最初は基本として安定する楽器の支え方を習慣づけたほうがよいでしょう。しかし、長年やっていくうち、刻一刻と変化していく左手右手の位置に従って楽器の位置が多少変わってもいい、それによってもし弾きにくくなったなら、その都度、楽器を今の位置から一瞬だけ前に傾けて、棹の位置を調節してからまた元に戻せばいいじゃないか、と思うようになったのです。
(そういえば、最初に二胡を習った南京の先生も同じような動作をしていました。)

これは私自身、現在も継続中の課題の1つなのですが、同じようなことに悩んでいる方々のちょっとした助けになれば、と思います。

***

アイキャッチ画像は散歩中にみつけたねこ。
背後からこっそり近づき、2枚くらいぱしゃり。
なかなか私の接近に気づかない。

もう少しで真後ろ、というところまで来てハッとびっくり。
その様子をまたぱしゃり。

おどろかせてすみません。

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