高音域を出す

●弦の振動のしかた

●速度×時間=距離

●圧も変わる

●自分も楽器も調節しよう

●強弱と高低

弦の振動のしかた

弦の振動の仕方は、音の高低によって変わります。

いや、弦の振動の仕方が違うと、人の耳には高さが違って聞こえるというべきか。

チューニングの時につかう「Hz(ヘルツ)」を調べて見ると、これは振動数を示す単位だそうです。

440Hzは「1秒間に440回振動する音」で、その音は「ラ」です。ピアノでいうと、「まんなかのド」からドレミファソと上がっていったラの音です。

倍の880Hzだと、1オクターブ上のラになります。

つまり、一秒間で440回振動するのと、880回振動するのでは、当然880回の方が速いですよね。また、速く振動するためには、振り幅も細かくなります。

まとめると、

低音=遅く・大きく 高音=速く・細かく

となります。

ということは、高い音を出すためには、速く、細かい振動を弦に与えるような運弓になるということです。

簡単な実験をしてみましょう。

1)1=D で、開放弦のを鳴らします。

2)右手の弓の速さ・力加減はそのままに鳴らし続けながら、左手を千斤から思い切って遠い位置に移動させて、指を弦に置きます(位置は適当でいいです)。

すると、右手の動きは同じようにしているにも関わらず、きっとギーギーとイヤな音がするのではないでしょうか。

この実験は極端な例ですが、換把(ポジション移動)をまだ習っていない方でも実感できますので、もしよかったらやってみて下さい。

速度×時間=距離

では、高い音を出すために、速く、細かい振動を弦に与えるには、具体的にどうすればよいでしょうか。

まず、「速く」。これは分かりやすいですね。弓を速く動かせばいいわけですが、2つのポイントがあります。

1つめは、とにかく腕をぶんぶん振り回せばいい、というものではないです。

あくまでも、「弦を振動させるため」という目的を忘れないようにしてください。

つまり、弦に弓がちゃんと接触していないと、いくら腕をぶんまわしても意味が無いのです。

そうならないよう、出ている音を聞きながら、右手を動かしてくださいね。

(ものすごく当たり前のように聞こえますが、大事なことです)

2つめは、「速度×時間=距離」という、小学校でならった公式です。
(私は「速度×時間=みちのり」と習った記憶がありますが・・・)

この公式によりますと、たとえ同じ時間でも、速度を上げると、距離が増えます。

これを「翻訳」すると、たとえ同じ長さの音符でも、弓の速度を上げると、必要な距離(弓幅)が長くなるということです。

さらにいうと、弓幅が広くなるということは、右手の動きが大きくなるということです。

もっというと、右手の動きが大きくなるほど、背骨(脊椎)の支えが必要だと言うことです(「二胡で楽しむワークショップ:右手編」では「ストレス発散アクティビティ」としてこの支えを実感してもらいました)。

これは、さらにつきつめていくと、頭と脊椎の状態が四肢の動きに影響するという、アレクサンダーテクニークの基本原理にかかわってくるのです。

圧も変わる

「速く」のつぎは、「細かく」です。細かい振動を弦に与えるには、あまり弓の重さを弦にかけてしまうと、細かい振動がつぶれてしまいます。

つまり、弓圧(弦にかかる弓の重さ)は、音が高くなるほど軽くなります。

しかし、外弦の場合、何もしない状態だと、弓は弓棹の重さによって自然に外弦に接触しています。(このブログの換弦の項目を参照のこと

なので、この弦にかかる重さをコントロールしてなければいけません。

具体的には、弓棹の重さがぜんぶ弦にかからないよう、右手でやさしく弓を支えてあげる必要があるのです。

では、内弦はどうでしょうか? 内弦ではまた事情が変わってきます。

なぜなら、内弦は外弦より弦が太いので、これを振動させるのに必要な力は外弦よりも大きくなるからです。

だから、内弦の高音は、外弦よりもややしっかり気味に運弓する必要があります。

あと、これはあくまでも私の個人的感覚なのですが、たとえ左手指が同じ位置でも、高音になるにつれて、内外弦の運弓の差が、より際立っていくような感じがします。

自分も楽器も調節しよう

運弓の加減が、音の高さによって変わることを知らなかった、という方もいらっしゃいます。

そういう方はラッキー! これからたくさんの伸びしろがあるんですから。

また、伸びしろがあるのは、ヒトも楽器も同じです。

楽器さんにも、高音域の振動に慣れてもらう必要があるんです。

弦楽器の音を変えるのは、弦の分割です(このことは「ワークショップ:楽器編」でやる予定です」)。分割の比が1:1とか2:3とかきれいな整数だと、音もでやすいのですが、そうでない音はきれいに出にくいという特徴があります。

例えば、D調第1ポジションでも、(レ)が(ミ)や(ファ)よりひっくりかえりやすいのもそのせいです。音によって出しやすい音と出しにくい音があるんです。

で、高い音も、当然ですが出やすい音と出にくい音があります。例えば、G調内弦の上点(高音点)はどちらかというと出にくく、上点は出やすいですよね。そういうときは、上点と上点を一弓で、交互に121212・・・(すべて上点あり)とひきます。いわば、出やすい音をブリッジに、出にくい音を鳴らすのです。

これは、そうしながら、左右の手の按弦・運弓の加減を少しずつ調節するという意味があるし、楽器に、出にくい音の振動に慣れてもらう、という意味もあります。

つまり、自分のカラダの使い方の調節と、楽器自体の振動の調節のどちらも必要なのです。

もひとつ、第1ポジションの12345・・・の間隔と、第2ポジションの上点ありの12345・・・の間隔は異なります。これは、ギターや琵琶などのフレット楽器を見ると一目瞭然ですね。高音ほど、間が狭まっています。この間隔の差にも慣れる必要がありますが、
これには日頃から音階練習をやっていると、きっと役立つでしょう。

強弱と高低

最後に補足を。

いぜん、強弱を付ける-1 において、こんなことを書きました。

弓速を遅く、弓圧を弱くすれば、弱い音になります。

弓速を速く、弓圧を強くすれば、強い音になります。

(中略)

注意すべきは、これはあくまで任意の一音に対しての比例関係です。

音の高さがかわると、また話が変わりますので、これは項を改めて述べたいと思います。

このことと、今回の高低の違いによる運弓の違いを、分けて考えてくださいね。

もういちど整理すると、強弱については、

同じ音について、強い音と弱い音を出すときの速さと圧のバランス

弱い音ほど弓圧は軽く弓速は遅く、強い音ほど弓圧は強く弓速は速く

です。音を弱く=弓圧を軽く、音を強く=弓圧を重く、というのは、とても実感しやすいですね。

まず、自分が普段意識せずにひいている音を、ふつうの大きさだとします。

もし、いつもの音より弱い音を出そうと思って弓圧を軽くしたのに、普段の運弓の速さのママだと、バランスが崩れて音がひっくりかえります。そこで、そうならないよう、弓の速度をいつもよりゆっくりにするのです。

一方、いつもの音より強い音を出そうと思って弓圧を重くしたのに、普段の運弓の速さのママだと、バランスが崩れて雑音がギーギー鳴ります。そこで、そうならないよう、弓の速度をいつもより速くするのです。

これは、第一ポジションから始める初心者の方でも実感できますので、一度、やってみてください。

一方、今回の内容は

低い音・高い音という音域の異なる音についての速さと圧のバランス

低い音ほど弓速は遅く弓圧は強めに、高い音ほど弓速は速く弓圧は軽めに

という内容でした。

低い音はゆっくり大きく振動するので、それにふさわしい振動を弓で与えます。

高い音は速く細かく振動するので、それにふさわしい振動を与えます。

そのバランスが崩れると、音がひっくり返ったりギコギコと雑音がなったりするのです。

第一ポジションでも、例えばD調と上点では異なる弓加減なのですが、この位の差ならあまり意識しないでも、できることがあります。というか、無意識に調節しているのかもしれません。

しかし、ポジション移動を学び、第2ポジションや第3ポジションの音を使い始めると、音の出し方の差がどんどん大きくなっていくため、第1ポジションで使っていた弓の加減から意識的に変えてひかないと、高音がつぶれてしまうことがあるのです。

このことを少し頭にいれておくだけでも、あなたの音が改善できるかもしれません。

この文章がそうやって少しでも皆さんの助けになれば、嬉しいです。

※なお、ここでは主に右手についての記載になっていて、左手には触れていません。
もちろん、左手も深く関わっていますが、まだいろいろ思うところがあるので、考えがまとまったらいつかはアップしたいと思っています。

記事についてのご質問、取り上げて欲しいトピックのリクエスト、ワークショップや体験レッスンの問い合わせ等はこちらへどうぞ!


右足あげて

左足のばして

のびのび~~

いいきもちだっだ

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