二胡の解体&琴托のやくわりーーその2

この記事は「二胡の解体&琴托のやくわりーーその1」の続きになります。

《コンテンツ》

●琴托は最近できた!

●昔の二胡

●琴筒の発明とその役割

琴托は最近できた!

さて、グループレッスンで二胡を解体後、再びの組み立てについては、解体をリクエストした方に体験を兼ねておまかせした私。

でも、琴軸に糸を巻くところで、新しい弦を用意するのを忘れて古い巻きぐせがついている弦を使わっていただくことになり、より難易度が上がってしまいました。

で、自分の楽器を取り出して、「えーっと、まずこんなふうに」と説明しようとしたら、こんどはそっちのほうがヤバい状態に・・・。

ヤバい状態というのは、↓な感じ。

ヤバい状態の弦

弦はよくしなって、「曲がり」には強い。しかし「折れ」には弱いのです。

なので、途中で↑のようになると、とがっているところから切れてしまったりします。

(弦交換のときにはこんな状態にならないよう、気をつけて下さいね!)

やばいっ!と慌ててなんとかしようとした私は、いま楽器を組み立てている方のケアどころではなくなり、そのへんのサポートはすべて、他の方々がやってくださったのでした。

なんちゅうか、ほんとうに講師としてダメダメだなあと思うとともに、周りから適切な助言をしているみなさん、なんちゅうかまことに頼りがいがあるなあと思いました。

***

そうこうしながら、解体した二胡も私の二胡も、どちらもちゃんと「二胡」となったのだが、この「弦を張る」という過程で、ちょっと思い出したことがあった。

ふつう、現行の二胡に弦を張るときには、まず琴托のテールピンに弦の端っこの輪っかを通しますよね? ↓の写真の赤丸部分がテールピンです。

テールピン

けど、上で「現行の二胡」とあえていったのは、実は琴托が二胡に取り付けられたのはわりとと最近、1950年代だったからなんです。

まあ、個人のスケールでいうと1950年代なんてすごい昔だと思えるかもしれませんが、唐代ごろにその存在が確認され、宋代に弓を使っていることが文献で確認され(※1)、明代に千斤ができた(※2)ということを考えると、ごく最近のことなのです。

  • ※1 『張韶老師の二胡講座』上巻、第1章。なお、弓の存在については、『中国楽器』所載の開元寺には飛天が弓を持っている写真があり、開元寺は唐乾寧四年(西暦997年)の建立だが、その当時から飛天があったのか、それとも校正に付け加えられたものなのかによって、解釈が変わってくる。このへんのことは、まだちゃんと調べていない。
  • ※2 『中華楽器大典』315頁

昔の二胡

バイオリンの世界にはいわゆる「名器」と呼ばれるストラディヴァリウスとかあります。調べてみると、17世紀後半から18世紀前半にかけて作られたようですが、そんな200年くらい前のものが残っていて、いまも現役で使われているわけです。

しかし私は、200年前の二胡などみたことありません。写真も含めて、知っている中で一番古いのは劉天華(1895-1932)の二胡です(写真は『劉天華記憶与研究集成』より)。

どちらにも琴托はありませんね。琴托がない時代には、琴棹の先に2本の弦を結びつけていたようです。

また、↓は劉天華の弟子の儲師竹(1901ー1955)が、日中戦争(1937-1945)の時に作った牛皮紙二胡の復元で、同じように弦を琴棹の先で固定している様子がよく分かります。

つまり、戦前まではずっと二胡に琴托はなかったのです。

では、琴托は誰が発明したか・・・いまのところは、劉天華のもう一人の弟子・蒋風之(1908ー1986)ではないかと思われます。

ご本人が、1953年前後に、「托板」なるものを琴筒の↓に固定したものを設計した、と記しているからです(『蒋風之二胡演奏芸術』2p)。

琴托の発明とその役割

同書によると、琴托の役割には2つあるそうです。

一つは、膝に置いた二胡を安定させるため。これはすごく納得します!

だって、もし琴托がなければ、琴棹の先っぽが腿に当たってぐりぐりして痛そうじゃないですか・・・。

そしてもう一つ、これは私が思いよらなかったことなのですが、琴筒つまり共鳴筒を腿から離して響きをよくする役割もあるそうです。

音は振動です。弦を弓でこすると振動し、その弦の振動がコマに伝わり、コマから蛇皮に伝わり、琴筒(共鳴胴)に伝わり、そして空気を伝わって相手の耳の鼓膜を震わせます。

そのどこかでふるえを止めるようなものをかませると、音が小さくなり、弱音器の役割を果たしますよね。

琴托がないと、共鳴胴の振動が腿によって止められてしまうので、琴托を挟むことで、振動の軽減を少なくするということでした。

※上記の記事は、下のツイートを再編集したものです。

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