人前でひく時に考えてみたこと(その2)

 《コンテンツ》

●聞いてなくても聞こえている・・・?

●会場をみまわす・現実を把握する

聞いていなくても聞こえている・・?

前回の続きです。
このたびの京都の中華料理屋さんでの演奏で私が立てたプランは3つ。

A)聞いている人、聞いていない人すべてに音楽を届ける意識で演奏する。
B)そのために、会場の広さを実感しながら演奏する。
c)情景を思い浮かべながら演奏を届ける。

プランAは、12月にアレクサンダー・テクニークの学校であるBodyChanceで、
ジェレミーさんにアクティビティを受けた時の経験を基にしています。

この時点では、依頼を打診されただけで、まだ正式な日時も演奏形態も
分かっていなかった状態だったので、とりあえずBGM演奏を前提に
トレイニーさんにお客さん役をやっていただき、
三々五々、適当に談笑している中で実際に演奏してみるという
アクティビティをやってみました。

そのあと、お客さん役のトレイニーさん(生徒さん)から
「楽しくおしゃべりしながらも、でもどこかで
二胡の音は背景としてちゃんと聞こえていたよ」とか
「聞いてないようで、音楽に影響されて
自然に話題が変わったりしてたかも」などなど、
思いも寄らなかったいろんな感想を聞くことができたのです。

こういう、パーティの場や料理屋さんでの演奏は何度かありますが、
(Facebookのアイコンは2011年に京都ホテルオークラ「桃李」で
BGM演奏したときのものです)
聞いている人も聞いていない人もいます。

時には自分で自分の音が聞こえないくらいの喧噪の中でひいたときもありました。
そんなときには、気をつけていても「どうせ」と思いがちです。
で、「聞いてない方がラクにひけるよ」なんて言っていました。

やがて、そんななかでも「聞いている人」が居ることが
だんだん見えてきました。そして、とにかく聞いている方に向けて
演奏するようにすると、だいぶん気持ちが変わってきました。

そして今回のアクティビティで次の段階に進んだのです!
聞いていない人も聞こえているんだ・・・と。
聞いている人にも聞いていない人にもひとしく音は届く。
音を聞くと人の鼓膜は震え、振動を伝える。

聞いていない人も、食事を楽しみ、会話を楽しんでいる。

そして彼らのこの楽しい空間・時間を、
私も共有して楽しんでいる。

そして私は音楽を届ける対象、
つまりお客さんとお客さんのいる空間を把握するため、
Bのプランを使いました。

会場をみまわす・現実を把握する

会場をみまわすというのは、「空間を把握する」という形で
BodyChanceの先生方の多くも、それぞれいろいろな表現で言及なさっています。

私なりの理解で言うと、「いまここ、という現実を把握する」てな感じでしょうか。
現実から乖離した思考・行動は意味が無いからです。

いわゆる「観客をかぼちゃと思え」「ここは自分の部屋だと思って」
とかいうのも、現実ではないから、力を持ちません。

こういう気づきも、おいおいブログに書いていきたいなと思いますが・・・。

話を戻すと、演奏の前のちょっとした挨拶をしながら
会場を見回してみたら、いろんな情報が飛び込んできました。

同じ場所なのに、人が居なかったリハとは違う空気感をまず味わいます。

適度なざわめきと食器のふれあう音。
店員のみなさんが縫うようにテーブルを巡り、
湯気だつ料理で、空気はあたたかく、やわらかくなっています。

活気溢れる空気の中、お客さん1人1人の姿も見えてきます。
「お客さん」というぼんやりとした概念が
年齢層、男性女性、服装等々、具体的な姿となって目の前に立ち現れます。

ふと、会場のすみっこの布製のついたてのようなものの奥に、
動く影が見えることに気づきました。
そして、ついたてのうえから、ひょこっと顔が覗いたのです。

なんと、ついたての向こう側にもお客さんがいらっしゃって、
立ち上がって首を伸ばし、こちらを見られたのでした。

リハの時には気づかなかったけれど、
あちらにもお客さんがいらっしゃるんだ、
あの影にいる方々もしっかり認識して演奏しよう、と思いました。

(つづきます)

***

2013年に尾道でみかけました。
撫でても動じない、温厚なねこ。

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