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●意外と最近・・・?
●どんどん増えて、そして・・・
●委員の顔ぶれ
意外と最近・・・?
中国の二胡検定が始まったのはほんの最近(?)のことで、1993年になります。
「最近」といったのは、たとえば↓のリンクによると、ヤマハ音楽能力検定制度(ヤマハグレード。私は受けていませんが…)は1967年だそうです。
https://www.yamaha-mf.or.jp/activity/history.html
いや、ピアノと二胡で比べるのはちょっと違うのでは?という声が聞こえてきそうですが・・・
根据中国音协全国乐器演奏(业余)考级委员会制定的“乐器演奏考级逐步展开”的原则,在钢琴、小提琴(业余)考级已试行两年得经验基础上,决定我国试行二胡(业余)考级工作。
上記の文章によると、中国におけるピアノとバイオリンの検定は、二胡よりも2年早いだけなので、1990年ごろ。やはり、日本の検定制度に比べると、かなり遅いですね。
とはいえ、これはあくまでも国の組織的な動きですので、民間でやっていた可能性も否定できませんが、おそらくはこれが全国で統一基準を作ろうという二胡検定への最初のアクションではないかと思うのです。
さて、上記の文章は、検定制度が発足したときに中国二胡考級専家委員会によって出版されたテキストの「前言」から引用したものです。
そのテキストとは、「全国二胡(業余)考級作品集(試行版)」。
↓の写真をご覧下さい。もう見られるのが恥ずかしいくらいボロボロになっています。
私の扱いも決して丁寧ではないと思いますが、なんか紙質の問題も多少はあるかと・・・。
本書は「一~六級」と「七~十級」の2冊に分かれています。
なお。中国の級は日本とちがって、十級が最上級です。つまり、一級から始まるわけですね。
そして、私が1997年に留学して二胡を習ったときにも(二胡留学ではないけど)、先生はこの1993年出版のテキストを使って教えて下さいました。
どんどん増えて、そして・・・
この「試行版」は1997年に「試行」がとれ、判型も大きくなった(B5サイズからA4サイズ)正式バージョンの「第一套」(↓)になりました。
しかし、このテキストに収録されているのはほんの一部。
この「第一套」(第1セット)に入らなかった曲や続々でてくる新曲ーーたとえば「战马奔腾」(1970年代)、「葡萄熟了」(80年代)、「阳光照耀着阳光照耀着塔什库尔干」(1976年のバイオリン曲を90年代に移植)などなどーーを収録するため、第二套、第三套・・・と続きのセットが出版され続け、けっきょく第四套まで登場しました。
しかも、第一套は試行版と同様、「一~六級」と「七~十級」の2冊でしたが、第二~四套はそれぞれが「一~四級」「五~六級」「七~八級」「九~十級」の4冊ずつあるので、つまり、ぜんぶ揃えると4×3=12冊に!
もう立たせることもできちゃう!
しかし、こんな状態だと、例えば一級の曲が、第一套~第四套の4冊にまたがって収録されていることになります。
先生も生徒も大変です。
それにたいして、なんとかしなきゃと思ったのでしょうか。
2001年に、第一套~第三套を級別に並び替えた「合集」が出版されました。
これで、一つの級につき一冊で、計10冊にすっきり収まったわけです。
いやいや、これらはすべて中国でみかけるたびに買ってきたのですが、持って帰るのが大変でした。
航空便だと高いので、船便で送るのですが、書店で買ったこれらを郵便局に持ち込んで、大きいダンボールを買って(日本と違って郵便局で段ボールを買えたり、日曜もあいてたりしてるのは助かりました。いまもそうなのかな・・・?)、中で動かないようテトリスみたいに本以外のものも詰め込んで送ると、帰国後、忘れた頃に段ボールがボロボロになって届き、部屋はまた狭くなっていき・・・。
もうなんとかしてくれ~という感じでした。
委員の顔ぶれ
さて、この検定教科書を主に選定したのは、さきほどちらっと出した「中国二胡考級専家委員会」です。正式には
中国音協全国楽器演奏考級委員会 二胡専門家委員会
です。中国音楽家協会は国の組織で、↓がおそらく公式サイトです。
サイトの「協会概況」から紹介文を見ると、1949年7月発足とあります。
あら、中華人民共和国ができるのが1949年10月1日(国慶節の日)なので、それより少し早いんだなと思いました。
おそらく、その下部組織に「全国楽器演奏考級委員会」があり、さらに各楽器の専門家が実際に楽曲の選定や級の策定を行なったのでしょう。
試行版の執行主編は3人、張韶と許講徳と趙寒陽です。
そして、実際の委員は10名。
( )内は日本語の漢字と、本書に基づき当時の肩書きが入っています。
まず、執行主編の3名。
・张韶(張韶 中央音楽学院教授)
・许讲德(許講徳 北京軍区戦友歌舞団国家一級演奏員)
・赵寒阳(趙寒陽 中央音楽学院副教授)
以下、同書に基づき画数順に
・王宜勤(中央広播民族楽団首席、国家一級演奏員)
・安如砺(安如礪 中国音楽学院器楽系主任、副教授)
・刘昌庐(劉昌廬 中央民族学院副教授)
・陈朝儒(陳朝儒 首都聯大芸術系教授)
・周耀锟(周耀錕 中央民族楽団首席、国家一級演奏員)
・蒋巽风(蒋巽風 空政文工団国家一級演奏員)
・薄占武(北京市少年宮高級教師)
教育畑から楽団の一級奏者までずらりと揃っていて、きっと「見たことある!」という名前が複数あるのではないでしょうか。
面白いのは、最後の薄氏で、少年宮の先生であると書いてあります。
少年宮とは、中国の子どもの課外活動のような団体ですが、↓の「コトバンク」をみると、英才教育もなされているようでした。
https://kotobank.jp/word/%E5%B0%91%E5%B9%B4%E5%AE%AE-1175069
みなさんの中には、「検定試験を受けたい」と言ったら、「それは子どもが受けるモノだ」と中国人の先生に言われたことはありませんか?
なんか、ある程度の級をとっておくと、受験に有利になるとかならんとか・・・。
少年宮の先生が入っていることからも、「業余」つまりアマチュア向けなのかなという感じがするし、アマチュアの中でも、こどものお稽古事が念頭にあるのかな、と感じました。
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さらに試行版から正式版(第一套)になると、執行主編を含む委員10人はそのままですが、これにさらに4名の委員が加わります。
新たなメンバーも、第一套の表記に従って、画数順に並べますと
王志伟(王志偉 中央広播民族楽団国家一級演奏員)
刘长福(劉長福 中央音楽学院教授)
陈耀星(陳耀星 二炮文工団国家一級演奏員)
张强(張強 武警文工団国家一級演奏員)
となります。
音楽学院(日本でいう音楽大学に相当)や楽団員が中心ですが、どちらかというとメンバーは首都・北京の組織の方が多いような気がします。
これが、あとで触れる王永徳主編の上海音楽学院のテキストとの齟齬に繋がるのかな、なんて思いますが。
さて、彼らが策定したグレードというのはどんなものなのか、次回から具体的に曲名を見ていこうと思います。
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この文章は以前ツイートした内容の↓の一部をもとにしたものです。
中国中国の二胡検定が始まったのはほんの最近(?)のことで、1993年だ。その時、中国二胡考級専家委員会が検定用のテキストの試行版を出版したが、1997年に留学して二胡を習った私に(二胡留学ではないけど)、先生はこのテキストを使って教えて下さった。(続く)|ウェブベルマーク https://t.co/6wqvW8i43u
— 井上幸紀 (@erhumao) January 20, 2022