運弓の方向②

《コンテンツ》

●運弓は横なのか?

●「肩」の構造を知る

●二胡とからだが響き合う

運弓は「横」なのか?

みなさんは、二胡の運弓の方向を「横」だと思っていないでしょうか?

もし自分が2D=平面の存在だったら横だと言わざるを得ませんが、実際は3D、つまり「立体」なので、前後の動きも加わるため、実際には斜め前という感じになるのです。

もし可能なら、誰かにお願いして、右の肩甲骨に手を置かせてもらいます。
そして、その状態で弓を真横に動かすのと、斜め前に動かすのをやってもらうのです。
すると、真横に動かす時に、肩甲骨を背骨の方にグッと近よらせていることがありありと分かると思います。

つまり、真横に腕を動かすためには、背中の筋肉を縮めなくてはいけないのです。
(具体的には、この動きの時には、主に「僧帽筋」というかなり大きな筋肉が働きます。)

運弓は弓が離れて欲しいのに、肩甲骨を引き寄せてしまう。
ちょっと思いとウラハラな動きになってしまいますよね・・・。

一方、斜め前の方向だと、肩甲骨は腕の動きに従ってずるずると前に移動していきます。
つまり、背中の筋肉を縮めなくても動くことができるのです。

この違いは、外から見ただけでも何となく分かるかもしれませんが、やっぱり実際に触れて感じ取る方がインパクトあるみたいですよ。

「肩」の構造を知る

上記の現象について、もう少し詳しく説明する前に、上の小見出しの“肩”に「」(かぎかっこ)がついている理由を先にお伝えしておきます。

それは、私達が「肩」と呼んでいる部位は、実際に「肩」という身体のパーツがあるわけではないからです。あえていうならば、この部分は実際には腕の一部です。

「腕」というのは、鎖骨から始まって、肩甲骨、上腕骨、前腕骨と繋がって、手のパーツになります。そしてこれらの腕の骨は、胸鎖関節で胴体と繋がっているだけです。もちろん、肩甲骨は、肋骨(背中)にはくっついていません。詳しくは、本ブログ「腕の始まり」を参照してください。

さて、腕を真横にするために、なぜ肩甲骨を背骨の方に寄せなければいけないのか、に話を戻します。

これはなぜかというと、人間の胴体は輪切りにすると円筒形で、肩甲骨はそれに沿って、上から見ると「ハ」の字の形に置かれています。ハの、下の方が前方ということですね。

そして、肩甲骨の前方にあるくぼみに、上腕骨が接している関節(肩甲上腕関節)があります。↓のイラストを見ると、肋骨のカーブにそった肩甲骨の位置や、肩甲骨と上腕骨とのつながりが分かりやすいと思います。

★上のイラストは「イラストAC」の会員登録無料素材からDLしました。

なので、肩甲骨の位置をそのままに、腕を前方に伸ばし、そのまま横に開いていくと、その限界は60度くらいになります。↓のイラストの「外旋」のところをみると、分かりやすいと思います。

★上のイラストは、「カンゴルー」の無料素材「肩関節の可動域」からDLさせていただきました。

で、腕を真横に持って行く=上記の「外旋」の開きを60度以上に持って行くということになり、すると、もう上腕骨の動きだけではダメで、肩甲骨の位置から変えなければいけなくなるんです。

二胡とからだが響き合う

さて、ここで私が感動したことがあります。

↓の図は、本ブログの「運弓の方向①」に載せた図です。
長方形は上から見た琴筒、丸は上からみた胴体です。
胴体に沿ってやや斜めに置かれた楽器に対し、弓の方向はなんとなくこんな感じの方向になります。

前項の、肩関節の「外旋」の最大の開きの目安が60度でしたよね。
実は、この角度って、ちょうど二胡の運弓の角度ととても近いんです。

分かりやすいように、上の図をひっくり返して、さっきの可動域の図と並べてみましょう。

   

二胡の運弓の方向が、肩甲骨を縮めずに伸ばせる腕の角度とだいたい同じ方向じゃないですか!

偶然なのか必然なのか分かりませんが、なんとよくできたものだろうと思ったものです。

もし、ニンゲンのような円筒形の胴体ではない、長方形のボディをもつロボットだったら、身体に沿って二胡をおいたときに、このような運弓角度にはならないでしょう。

(あ、そもそもニンゲンの腕の仕組みと違うので、そもそも比べる必要もないのですが・・・)

二胡って、もしかしたら身体にやさしい楽器なのかもしれませんね。

***

※上記の記事は、下のツイートをはじめとしたいくつかのツイートを再編集したものです。

https://x.com/erhumao/status/1751042079109886333?s=20

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