指の話4 小指について(2017/12/24更新)

『張韶老師の二胡講座:下巻』123ページのコラム「小指まとめ」について。

●コラム冒頭 「指を開くとは」
関連記事を こちら にまとめました。

●コラム 小指を使うとき1
a)小指の始まり
b)小指の使い方
c)手首の動きと肘の回転運動の利用

●コラム 小指を使うとき2
d)小指のサポート
e)腕のサポート

●コラム 小指の揉弦
f)小指の揉弦

ここでは、コラム「小指を使うとき」より、
b)小指の使い方(一部)
c)手首の動きと肘の回転運動の利用
d)小指のサポート
e)腕のサポート
についてのトピックをまとめます。

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さて小指の話のつづきです。
小指は短い、しかるべき位置に届かない、という問題があります。

これについて、まずは、「指の話3 指の始まり」 に書いたように、
手のひらの中の隠れた関節(手根中手関節。CMC関節とも)を使ってみましょう。
もちろん、あらゆる指で使えますが、特に小指で使えます。
この関節の可動域は、親指を除くと、小指がいちばん広いからです。
これを利用しない手はないです。

もう一つ、小指はてのひらに、手首に、前腕につながっています。
このへんを使って、小指の位置調整ができます。

まずは手首です。手首はちょうつがいのように一方向にしか動かない、と思いがちです。
でも、手首の中には小さい骨たち(まとめて手根骨)がならんでいるのです(動きの解剖学162p)
ちょうつがいのような動きは屈曲と伸展といいます。

そのほかにも、外転(撓屈。親指側と前腕が近づくような動き)と
内転(尺屈。小指側と前腕が近づくような動き)もできます。
(動きの解剖学161、166p)

これらの動きを組み合わせると、前腕はほとんど動かさない状態で、
手首を360度ぐるっと回転させることができます。

次は肘です。肘から先の前腕には2本の骨があります。橈骨と尺骨です。
骨が2本あるからこそ、肘の位置をほとんど動かさずに
手のひらも手の甲も見ることができます。
この動きを回内(手のひら→手の甲)・回外(手の甲→手のひら)といいます。

小指そのものを無理に伸ばすと、どうしても指自体をピンとそらしてしまいます。
すると、按弦(弦の上に指を置く)の動作が、バタバタしてしまうのです。
なので、『張韶老師の二胡講座:下巻』123ページのコラム「小指まとめ」にあるように
少しでも「自然なカーブを保つのが理想」です。
(私はこのことを、杉原先生から習い始めた初期の頃に聞きました。)

そのために、まずこれらの要素、つまり

・手のひらの中の関節の動き
・手首の位置の微調整
・肘の回転による手首の角度

をうまく組み合わせることで、小指を適切な位置に届かせるサポートをします。

初級の方は、まずD調第1ポジションから学びますが、
よっぽど小指が長い恵まれた方は別にして、
ふつうの方は、一二三指をつかうときと同じ手の形のままでは、
小指が内弦まで届きません。

で、上記のサポートを利用して、小指を使う時に少し手の形を変えて、
小指が使いやすい位置に手のひらを持って行くのです。

中級の方は、この動きをビブラート(滚揉=バイオリンのビブラートを応用したビブラート)に使えます。
このことについては、また別の機会に述べます。

**

最後に、小指についてもう1つ頭に入れておきたいことがあります。
小指は、上腕~前腕からのサポートを受けて動きを主導する側にあるということです。

日常生活を考えてみましょう。
傘を持つとき、包丁を持つとき、私達は小指を中心に持っています。
人によっては、バットやゴルフクラブを持つときにそう指導されることもあるでしょう。

腕は胸鎖関節から始まります。
そこは、腕の始まりである鎖骨が、胴体である胸骨と繋がっている部分です。
そして鎖骨は肩甲骨と繋がっています。
肩甲骨は上腕骨と繋がっています。
(これについては「腕の始まり」を参照のこと)

では、上腕骨と繋がっている前腕の骨は、
親指側にある橈骨と、小指側にある尺骨のどちらでしょうか?

いちど、試してみて下さい。
左手の手のひらを上に向けて、腕を伸ばします。
そして肘を曲げます。ハンドバックを持っているような格好です。

右手親指で肘の内側のでっぱり(内側上顆)を、
中指で肘の外側のでっぱり(外側上顆)を、
そして人差し指で肘の先端(肘頭突起)を触りながら、
肘を曲げ伸ばししてみます。

すると、親指と中指で触っている上腕骨に、
上腕の骨ががっちり組み合わさっていることや
人差し指で触っている肘の先端の固いところは、
前腕の骨ということがわかるでしょう。

(いざというときには肘打ちという攻撃もできる最強のところですね。
格闘家はここで頭蓋骨を割ることができるくらいの危険な技だそうです。
→ https://oshiete.goo.ne.jp/qa/2154850.html )

では、人差し指で触っている部分で骨を探りながら、指の方に近づけていって下さい。
そこで、最初の問いに戻ります。
いま触っている前腕の骨は、親指側にある橈骨と、小指側にある尺骨のどちらでしょうか?








そうですね。小指側にある尺骨です。
だから、小指側は包丁や傘やバットをしっかり支えることができるのです。

右手も左手も、小指はあまり使っていないように見えます。
しかし、前腕をしかるべき位置で支えているのは、小指側です。
そのうえで、他の指が右手の弓による細やかな表現や、
左手の一~三指が自由に動くサポートをしています。

ただ、右手小指はそれ自体が弓に触ることはありませんが、
左手小指は出番があります。そのときには、他の指より短いという欠点を
最初にのべたさまざまな動きをフル活用してサポートしてあげてください。

さらに、小指の利点はまだまだあります。小指を使う時は他の指、
おもに二、三指も手助けしてあげることができるんです。
これについては、「ビブラートの話ー4」のところでまた説明します。

○関連項目
「腕の始まり」○2017/12/24更新

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くろねこはなにをみているのか

あっ、あんなところに

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