《コンテンツ》
●二胡のルーツを遡る
●さあ、開いてみよう
●中国伝統楽器の世界
二胡のルーツを遡る
二胡についての本を読むと、だいたい出てくる絵があります。
みなさんはご覧になったことがありますか?
これは「奚琴(けいきん)」という楽器で、二胡のご先祖様と言われるものです。
唐代にはこの形で、竹片でこすっていたそうです。
のち、宋代に竹から弓で演奏するようになり、明代に千斤ができ、のちに琴托ができたと言われます。
もちろん、『張韶老師の二胡講座』にも載っていますよ!
上巻の1ページ目です。
さて、この図が載っているのは、陳暘(ちんよう)という方が編纂した「楽書」という本です。北宋にできた本だということです。
私は学生時代は東洋史専攻で、中国古代史を学んでいました。
当時のことはほとんど忘れましたが、なにぶん古代のことなので、文献として残っているものはほぼなく、一介の学生が原典に触れることはまず無理でした。
しかし、昨年たまたま検索しているときに、はじめて、この本を自分のパソコンから見れることを知ったのです!
※注:いちおう、書誌情報ですが、同サイトによると江戸期の写本です(尾張藩明倫堂の旧蔵本)。
さあ、開いてみよう
さて、ではこのサイトでも閲覧の仕方を詳しく説明したいと思います。
『楽書』を見ることができるのは、国会図書館デジタルコレクションです。
そのことを、ツイッターでもつぶやきました。
もしスマホから見る場合は、↓のツイートに手順を書いています。
二胡のテキストや中国音楽に関する本をみたとき、ときどき唐代の二胡のご先祖様である「奚琴(けいきん)」の図が載ってる時がある。糸巻きの向きが逆なやつで、もしかしたら見たことがある方もいるかもしれないし、私も前のツイートに載っけた(続く)|ウェブベルマークhttps://t.co/6wqvW8i43u
— 井上幸紀 (@erhumao) November 14, 2021
で、ここでは、パソコンでの開き方を説明します。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2545285?tocOpened=1
上のリンクからアクセスすると、下のような画面がでます。
まず、簡単な操作を説明します。
左右のさんかくマークを押すとページをめくることができます。
右のさんかくはページをめくるほうです。
ではさっそく「奚琴」を見にいきましょう。
まず、目次から探してみます。
***
『楽書』はいくつかの冊子に分かれており、一枚ずつ△でめくってもたどり着きません。
ここから、[2][30]とあるところ(左側の赤丸の所)をクリックします。
すると、下のようにページ数がプルダウンリストで表示されるので、「コマ番号」の項目から目的のページにカーソルを合わせます。ここでは4ページを開いてみましょう。
開くとこうなります。
「奚琴」は巻128の「胡部」>「八音」>「絲之属 上」のところにありますね。
この分類について説明します。
まず、この『楽書』は全200巻とありますが、巻97から「楽図論」が始まります。
そして、雅部・胡部・俗部とそれぞれのジャンルに分けて、楽器を分類して紹介していきます。
中国伝統楽器の世界
現在の楽器の分類は、例えば西洋オケの楽器だったら、弦楽器・管楽器(金管・木管)・打楽器に分かれます。では、中国伝統楽器ではどうでしょうか?
やはり大まかに分けると弦楽器・管楽器・打楽器なのですが、特徴的なのは、弦楽器が擦弦・弾撥(だんぱつ)に分かれることです。
擦弦楽器のことを拉弦楽器、弓弦楽器と呼ぶこともありますし、弾撥楽器を弾弦楽器と呼ぶこともあります。
しかし、古代中国では、材料別に8つに分けていました。
これを「八音」と言います。
「八音」の内訳は、コマ番号25にありますが、
金・石・土・革・絲(糸)・匏(ほう)・竹・木です。
「匏」は「ふくべ」と読み、ここでは「ひょうたん」のことです。
で、奚琴は、外来の楽器で、糸を貼っている弦楽器として、八音の「絲之属」のところに分類されているのです。
では次に、実際の図を見てみましょう。
まず「目次・巻号」のタブから[29][25]のところを開き、それからコマ番号14のところを見ます。
すると、「奚琴」の図が出てきました。
ちなみに、↓の赤丸のところをクリックすると、画面に各ページの小さいサムネイルが出てきます。
原典にあたることで見えてくるモノがありますし、また、ただぼーっと眺めるだけでも楽しいです。「え?」というビジュアルの楽器もたくさんありますし。
特に研究とかやっていなくても、たまにはこのような絵をみながら、過去に思いを馳せるのもいいですね!