《コンテンツ》
●モーチンってなに?
●モーチンに慣れてみる
●モーチンとなかよく!
モーチンってなに?
中国の譜面をみると、ときどき練習曲に「○○模进练习」という曲名のものがあります。
「练习(liànxí リエンシー)」は「練習」の簡体字(中国大陸で使われている文字)ですが、では「模进」とはなんでしょうか?
「模进」(mójìn。モーチン。「进」は「進」の簡体字)は、一般に「シークエンス」といいます。
トランプ用語でたまにでてきますが、音楽でいうと、なんというか、同じようなパターンの音型が規則的に出てくるものです。
このパターンを見つけると、譜読みや暗譜がすごくラクになります。
たとえば、
ド ミ レ ファ ミ ソ ファ ラ …
というフレーズがあったとしますよね。
これを、「ドのつぎはミ、その次はレか。ほんで次はファ、次はミ、…」
と、まるで紙芝居のように、ある音符をひいたら「えっと次は」という感じで、一つ一つの音符をバラバラにみていくようにひくと、すごく大変です。
けれど、これは「ドレミファソラ」という音階がまずあって、それぞれの音のあとに3度上の音を挟んでいったもの、と解釈すると、一瞬で把握することができます。
3度というのは、同じ音を1度とした時の音の隔たり(音程)のことです。ドなら、ド→ドは一度、ド→レは二度、ド→ミは3度ということになります。すると、
ドミ レファ ミソ ファラ
の中に
ド レ ミ ファ
というシンプルな音階が見えてきませんか?
さらに、この先はたぶん
ドミ レファ ミソ ファラ ソシ ラド シレ …
と続くかもしれない、という先の予測までできるわけです。
こういう規則性を、譜読みに苦労している生徒さんにちょっとお伝えすると、先を見通してひけるようになるので、そんなに練習していない曲でも譜面に必死にかぶりついてひかなくてもいいところが出てきたりするのです。
そのため、いままで1音1音をたどたどしくひいてた方が、すうっと数小節を流れるようにひくことができるようになったりします。
まるで、紙芝居が4コママンガになったように(?)目線の動き=視覚情報のとりこみがスムーズになって、脳が、どんなメロディかをイメージしやすくなるのです。
「ドミ レファ ミソ ファラ」は、五線譜だったらもっと分かりやすいです
(便宜的に1=Cで表記します)
五線譜だと、下のような規則的なジグザクが見えてきませんか?
これは、「1234…」という数字で表記された譜面を「ドレミファ…」という「音符」に直したからこそみえてくるラインです。音符にすることで高低差が生まれ、ラインが見えてくるのです。
モーチンに慣れてみる
次に、もう少し難しいものに挑戦してみましょう
ドミレドレファミレミファミファラソラ
一気に難しくなりました。ドミ、はさっきと同じです。けど、次がレファでなくレドになっています。
これは、2つずつではなく、4つの音符をセットにすると考えやすいです。
ドミレド レファミレ ミソファミ ファラソファ
ド レ ミ ファ
やっぱり音階が見えてきましたね(↑のまるじるし)。
そして、4つずつのまとまりでつくる「へ」の字のような形が、一音ずつ上昇しているパターンになっているのにも気づくはずです。
んで、もしそして、もし「ドミレド レファミレ ミソファミ ファラソファ」からさらに先に続くとすると、次はどんな音になるかも、ついでに考えてみて下さい。
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そう、これにつづくのは「ソシラソ」じゃないか、と予測できるようになりますよね!
さらに難しいものに挑戦してみましょう。こんどは数字譜です。
「」のついている部分のパターンを考えてみましょう。
これは、↓の青線のように2小節単位に区切ると分かりやすいのではないでしょうか。
こうすると、赤丸のソラシドレミという音階が見えてきますね。
この音階の間にソファソファソファソが入っているだけです。
この曲では、作曲者の張韶氏が、赤丸のポイントとなる音に >(アクセント)をつけてくださってるので、より分かりやすくなっていますよね。
この譜面は『張韶老師の二胡講座:下巻』20pの「G調上把総合練習」の一部です。最初に習うD調では、二三指はいつもくっつけていましたが、G調では外弦の4と5をひく時に二指と三指の間(指距)をひらくので、その練習を曲の中にたくさん入れこんでいるのです。
モーチンとなかよく!
初めて楽器を習う方は、こういう見方に慣れていないかもしれません。
しかし、練習曲の多くは、このような「パターン=シークエンス=模进」でできていて、
さらに、練習曲ではなく楽曲でも多用されています。
シンプルな練習曲のなかで、このパターンの見つけ方に慣れておくと、
楽曲の譜読みもかなり効率的になるんですよ。
ぜひ、モーチンとなかよくなってくださいね!
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おや、ここで、「いや、譜読みができたからってひけるかどうかはまた別だし…」という小さなつぶやきがどこからか聞こえてきました。
お気持ちはすごく分かります・・・
けれど、初めてみる楽譜で、譜面を読む練習と、実際に音を出す練習を同時にすると、ものすごく大変なのです。
ドって音を一つだすだけでも、それが何調で、それならどっち弦のどの指で、右手と左手、拉弓と推弓、その他もろもろ・・・特に、初心者の方は、それらをいっぺんにやろうと頑張ってしまう方が少なくありません。
だけど、譜読みだけでも早くできると、負担はかなり減ります。
さらに、譜読みと楽器の間に、音を出すのが負担ではない「メロディをうたうこと」というスモールステップを挟み込むと、もっと楽になります。
ほかにもたくさんのスモールステップを設定することができますが、楽器のレッスンでは、楽器や譜面をどうひくかというだけでなく、どのように練習するのかということも学んでいけるので、経験すればするほど、効率良く練習することができるようになります。
ぜひ心の中に留めておいてくださいね!