「左手だけ」練習

※これは2020年4月1日のツイートの内容を大幅に加筆・改稿したものです。
もとのツイートはこちら

どうやって練習するか、を洗い出す

二胡を練習するときって、いろいろな角度からの練習方法やチェック方法ってあると思います。

その、あくまでも「いまの」自分なりの例として、それらを頭に浮かぶままに書き留めたやつを整理・列挙した「快弓チェックリスト」と名付けたプリントを2020年4月1日午後のワークショップ「実践編」の時に配布しました。

というのは、「実践編」は今回はじめてやったので、予定通りに進むとはかぎらないため、もし時間が余ったら、このプリントを話のとっかかりとしてみんなで練習の手順を考えてみようと思ったのです。
あくまでも、話のとっかかりとして、であって、こうしろとかこうすべき、というのではありません

そしたら、これをやってみたかった、というお声をいくつか(といっても計3名の出席ですが)いただきました。
そのプリントを再掲したうえで、ちょっと補足的なことを過去のツイートをもとに書きとめておこうと思います。

まずは、下がプリントの現物です。
ブログ掲載にあたって、テキストデータをコピペして、さらに、この文中で補足しやすいよう、新たに番号を振りました。
《(快弓)チェックリスト》

1 まずは・・・
①情景・感情・風格 その速度で表現したいものはなに?
②パターン分析(シークエンス)
③歌う 頭の中の速度設定+目線の動き (+暗譜)

2 練習速度の下限設定

3 右手だけで ※頭ふんわり+自分全体
①換弦 順向と逆向 弓段
②弓幅・弓段  ふりまわされてない?
③少し位置を変えるだけでやりやすいことも
④拉弓始まり・推弓始まり 駱駝とか
⑤アクセント・シンコペーションなど

4右手+歌) ※頭ふんわり+自分全体

5 右手+左手 ※頭ふんわり+自分全体
①動作の手順確認(時には右手抜きで)
②均等。「動かない」と「待てない」→リズム練習
③空弦がらみ 四指がらみ・一指の動き・三指の伸ばし
④保留の有無・タッチ
⑤弦に置く動作・弦から離れる動作
⑥換把(把位・指距) ←必要ならその前に音階練習
⑦タイミング・お互いに待つ 必要なら小さな動作で

6 動作の切り替えの際に一次停止
①準備(重音・換把・指)
②自分への指示。身体が行きたい方と実際の動きとの齟齬

いま思うに、別に「快弓」と限定しないでもいいですね。

プリントを作った当日は、「快弓」をやりたい、という過去のワークショップのアンケートに基づいて、それのヒントになるかなと思ってこの2文字を入れたので・・・。

で、なぜ、当日配ったプリントに番号を振らなかったというと、「この順番にやらなきゃ」のたぐいの受け止められ方をされたら困るな、と思ったからです。

私はこれらを、どちらかというとランダムに、気が向いたときに使っています。

たとえば、新しい曲を譜読みしていて、がちゃがちゃとひいているとき、ふと我に返って、1の項目に戻ったり、とか。
いぜんやった曲を、2から改めてやっておく、とか。

で、2020年4月1日のツイートでは、その先日(私がツイートで「先日」というのはそれをぼやかしています。前日の時もあれば、数日前、数週間前のできごともぜんぶ「先日」ということにしています)にあった二胡個人レッスンの生徒さんに対して、5の①の方法を使ってみて、有効だったので、それについてつぶやいたのです。

音は出ないけど・・・いつもの習慣から脱する

子どものころピアノを習った方は、よく、右手だけ、左手だけ、で練習したことがあると思います
(最近のピアノの先生は、最初から両手で教える方もいらっしゃるようですが。小学校の二胡の生徒さんがピアノも習っているので、そう聞きました)

まあ、ピアノだったら、右手だけでも、左手だけでも、どっちでも音がでます。
二胡も、右手だったら、音がでます。

右手は音を作るので、特にアクセントやスタカートなどの弓法の練習や、譜面通りにひくと弓が足りなくなる、などの弓の配分を改めて考えるときに、右手だけの練習は効果があると思います。

ただ、左手だけ、となるとどうでしょうか?
二胡は、ピアノと違って、左手だけで音を出すことはできません。

しかし、右手だけでひいてみることが弓法の練習に役立つように、左手だけでひくのも指法の練習に役立つ場合もあります。

例えば、プラルトリラーや各種滑音などがひしめいてるフレーズなどがうまくいかないとき・・・。

そんな時は、ちょっと音程のことはあっちに措いといて(もちろん左手だけでは音が出ないので、音程が分からないのですが)、左手だけでゆっくり手順を確認するように動かしてみるのです。

いろいろな場面で「左手だけ」を試してみたのですが、多くの生徒さんが、右手で音を出さないほうが左手の無駄な力が抜けやすいみたいです。

おそらく、右手で音を出しながら左手を使うと、いつもの習慣で無駄な力が入ってしまうことがあるみたいなんです。

音は出ないけど・・・必要な動きを整理する

左手だけ練習の利点はまだあります。

二胡は鍵盤楽器と違い、「按弦」(弦に指を置く)でも「離弦」(弦から指を離す)でも音が出る楽器です。

例えば、D調で4212 4212 4212・・・・って同じフレーズを繰り返してひくとしますよね。

これがピアノだったら、指はタタタタ、タタタタ、タタタタ・・・と音の数だけ打鍵します。音のリズムと指のリズムが一致します。

しかし、二胡の場合、タタ タ、タタ タ、タタ タ、と、開放弦1のところだけ、なんか「すかっ」となるんです。

この「すかっ」があるということをただ「知っている」だけでも、音の粒が揃えやすくなったり、指のムダな動きを減らしたりできるような気がします。

また、この「離弦」でも音が変わるというのは、利点でもあります。

たとえば、5についたら「565」となるプラルトリラー(下図。ちなみに括弧内はモルデントという別の記号)ですが、ピアノならタタタと3回打鍵しなければならないところです。

しかし、二胡では、例えば5を一指でひくとしたら、その一指5は保留のままで、二指でポンとかるく弦を叩くようにすると、565になるんです。

まあ、細かく言うと、1指を置く(5)→2指を置く(6)→2指離す(5)の3つの動作ですが、気分的には「二指のワンストローク(ポン!)だけで、音が3つもひけちゃう!」って感じなんです。

そうやって、出したいフレーズと、実際に必要な指の動きが丁寧に確認でき、頭の中で動きを整理できるのも、左手だけ練習の良さだと思います。

音は出ないけど・・・歌と指とを同期させる

でも、もっとも強調したいのは、この3番目です。

もし、あなたがまったく技術的な問題を抱えておらず、二胡を自由にひきこなせる、慣らしたい音が鳴らせるという状況をうっとりと想像してみてください。

そして、心の中で、そのフレーズを歌ってください。
曲はなんでもいいのですが、できれば、ゆっくりとしたメロディの、すでにひける、自分が大好きな曲がいいでしょう。

そしたら、二胡を持って、心の中の声と同期させながら、左手だけを動かしてみてください。
できれば、ほんとうに声に出して歌いながらの方がいいと思います。

それはうたのうまさとは関係なくて、自分の声に右手のかわりをしてもらいたいからです。
ココロの中のイメージを、歌として声に出す。そして、そのメロディの流れを、左手の動きと完全に一体化させるんです。

たとえば、指がころんでしまってどうしても均等にならない、という方でも、歌っていただくと、とてもきれいに音を配分なさっています。だから、その歌とともに、指を動かすと、やがて、自分の歌と指が同期していきます。

また、「間」とか、リット(だんだん遅く)の加減とか、フェルマータをどこまで伸ばすか、などのイメージも、歌ってみると自然にできる場合があります

(まあ、「歌う」という手段は左手の動きとは離れたところでも有効ですが)。

逆に、歌えない場合は、自分の中でまだイメージができていないから、身体もどう動いていいのか分からないという場合が多いです

→「チェックリスト」1)「ため」とかのイメージ

というか、実際には左手に導かれてメロディがでてきます。

実は、左手の動きは、右手よりもほんの一瞬速いからです。

左手が右手よりわずかに速く指をセットし、そして右手が動き出すことでその弦の長さの音を出すのが弦楽器なのですから。

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