2018/3/7 二胡を楽しむワークショップ~右手編 報告

2018年3月7日の「二胡を楽しむ会特別編~二胡を楽しむワークショップ」の報告です。
いつもの会場である天王寺区民センター第4会議室で行いました。

テーマ:二胡を楽しむワークショップ 右手編
1 腕の動きは脊椎しだい
2 腕と二胡のマッピング
3 腕の動きを弓に伝える
4 まとめ

このテーマにしたのは、私自身が長い間、右手を軽視していたからです。
思うように動かない左手。一方、利き手である右手は、ただ左右に動かすのみ。
いっそ、左右を逆にすればいいのに・・・とすら、過去の私は思ってました。

しかし、音を作り出す右手の大切さに、杉原先生のレッスンを通じて少しずつ気づき出しました。
そして、『張韶老師の二胡講座』を訳す過程で、私はこの一文に出会ったのです。

弓を運用して楽器の内容や表情を表現する方法を「弓法」といいます。

そうか。弓=表現なんだ。これは新しい驚きでした。

でも、よく考えてみたら、これってほんとうに当たり前のことなんです。
だって、基本的に二胡の音は弓で出すから、弓をあやつる右手の大事さは、歌や管楽器の人にとっての「息」に匹敵するものなのに・・・。

それに、右手は二胡をひくうえで一番アクションが大きい部位です。
ここのコンディションは、左手のみならず、全身に影響してきます。

つまり、右手は、楽器を演奏するという音楽的な意味でも、身体の動きという点でも、重要な箇所なんです。

1 腕の動きは脊椎しだい

ここのパートは楽器無しで行いました。

まず、はじめの挨拶のあと、参加者のみなさんに簡単な自己紹介をお願いしました。

そのあと、すぐ第1のアクティビティ。
これは、体幹の状態の違いがいかに腕の動きに影響するか、ということを探求するものです。
役割を変えて、何回か実験を繰り返し、そのあと、みなさんの感想をシェアしてもらいます。

そのあと、ちょっとだけ座学で、その理由を筋肉と骨のしくみから考えてみました。

ポイントは以下。

・解剖学的な「腕」は前腕・上腕だけでなく、さらに肩甲骨・鎖骨があって、鎖骨で胴体に繋がっている
・腕、とくに肩甲骨につく筋肉の多くが背骨にもついている。
・腕を動かす筋肉(→Aとする)は瞬発力はあるが持久力は無い、一方、脊椎まわりの頭を支える筋肉(→Bとする)は、瞬発力はないが持久力はある。
・ふつうはBで頭を支えているが、頭の位置を感じる鋭いセンサーが「頭が落ちそう!」と察知すると、Aの筋肉も協力して頭を支えるが、そうするとAはすぐ疲れてしまって肩こり等の原因になるし、しかも「腕を動かす」というAの筋肉の働きも十分に行えない

そのあと、二胡のひきまね(エアー二胡)をやってみて頭の動きを観察したり、座り方を探求したり、いろいろ動いてもらいました。

座り方については、このワークショップのあとでも、BodyChance(アレクサンダー・テクニークの学校)で探求しているところです。

2 腕と二胡のマッピング

休憩の後、ここからは実際に楽器をもってやっていきます。

まずは、楽器を載せること。楽器を支えている主な身体のパーツは、膝・胴体・左手です。
左手の一点で楽器をもち、あとはフリーにします(これは後の左手編につなげます)

そして、音を出します。
第1部の腕のマッピングに、さらに二胡のマッピングを足していきます。
まずは、どうやって二胡の音がでるのか考えて、次はどうやったら効率的に二胡の音を鳴らせるか、について。
でも、これは構造的に決まっているので、わかりやすいです。

そのうえで、弓を擦る方向に腕を動かすのですが、その方向がたまたま、一致しているのです!
つまり、二胡の弦が構造的にいちばん響く弓の方向と、人間の腕が構造的に一番ラクに伸ばせる方向が一致しているということです。

二胡は、唐代くらいから形の変化がほとんどない、原始的な楽器(そこが欠点でも長所でもあるのですが)だと思っていたのですが、なんと、人間の構造に叶う形をしていたんです。

見直したぞ、二胡!という気持ちでした。

3 腕の動きを弓に伝える

いまの私は、運弓に際し、「腕」と「手(指)」の役割分担が必要だと考えています。
そこで、その間にある「手首」について、「手首を動かす」と「手首が動く」の区別を確認しました。

腕の端っこ、つまり前腕の骨(尺骨茎状突起と橈骨茎状突起)をもちます。
・そこを固定して「手首を動かす」
・そこを持って腕を振ることで「手首が動く」

そして、腕と手はどう役割分担しているか。
・弓を左右に動かし、スピードなどをコントロールしているのは腕
・弓の向きを微調整し、内外弦の移動など細かいことをやっているのは手。

大きな筋肉で動かす腕が、司令塔である手をつれていくという感じです。

4 まとめ

ほんで「まとめ」ですが、実はわたし、当日にきちんとまとめをちゃんと言えたのか、ぜんぜん記憶に無いです。
でも、言い忘れてもいいように、当日の配付資料に書いていたからOK?

以下がまとめです。ただし、当日配布資料の記載に少し補っています。

・腕:頭を支える役割から解放して、自由に動けるようにしてあげる
・手:楽器を支える役割(左手)と、弓を動かす役割(右腕)から解放して、自由に動けるようにしてあげる

ただ、まとめよりもっと言いたかったこと。
それが、きょうやったことを「日常生活に活かす」ということです。

歩くとき
座るとき
パソコン扱うとき
スマホ見るとき
テレビ見るとき

・・・

ほんのちょっとでもいいから、日常生活の中で思い出してみる。
それは、日常生活のすべてを、二胡上達のためにつかう、というストイックなものではありません。
(まあ、そうありたい人はそれでもいいけど)

というより、二胡をきっかけに、自分の身体の使い方を見直し、もし無理があったばあい、ラクで合理的な使い方にしていく。

たとえば、私の場合は、バッグの持ち方だったり、ご飯の食べ方だったりします。
自分の身体の使い方のクセに気付けただけで、中高生から悩まされていた肩こりがだいぶん解消しました。

アレクサンダー・テクニークは治療法ではないので、「~が治った」「~に効く」みたいな言い方はしないほうがいい、という意見もありますが、でも、日頃の使い方のクセの小さな積み重ねが、頑固な肩こりを生み出していたという実感はあります。

少なくとも私個人の場合、二胡をはじめたことがきっかけで、回り回ってアレクサンダー・テクニークに出会い、そして、自分の暮らし・思考全体に変化が現れ始めているのは確かなのです。

参加者の感想

※掲載可の方のみの感想です。

●今まで気づかなかったことをたくさん知ることができて、とても有意義なワークショップでした。今後の演奏に活かせそうな気がします。

●身体の使い方が良くわかった! 日常生活や二胡を弾く時に今日、教えて頂いた事 使える習慣にしたい。

●あまり意識したことがないことが多かったので、体を意識するということが大切だと思いました。体のホームポジションが自分が考えていたポジションとは違っていて、気付けてよかったです。

●身体を使い、具体的で自分で体感できて、良かったです。他の人の感覚なども聞けて、様々ということもよくわかりました。力をどこかに入れると全身に及ぶ、うまく動かせない、コントロールしにくくなること、弓の動かし方、頭をフリーにラクにしてあげる、など いろいろ本当に良くわかりました。実践したいと思います。たくさんの気付きをありがとうございました。(すっぴん さん)

●想像していたよりもずっとたくさんの事を教えて頂きました。肩こりに悩んでいたので、それについて運弓等との関係を知りたかったのですが、どうやって勉強したらいいかわかりませんでした。本当にありがとうございました。(あず さん)

自分の感想

今回は自分が開く初めてのワークショップということで、それなりのプレッシャーや不安もありました。

実際、準備不足も災いして、当日は途中で話の行き先がわからなくなったり、いちばん大事な「頭-脊椎」の位置(トップジョイント)の確認を完全に忘れて、最後の最後に慌てて付け加えたりと、失態も多々ありました。

ほか、

 もうちょっと内容を絞ればよかった・・・
 生徒さんの反応をもっと受け止めたらよかった・・・
 途中で話が飛んだりしてしまった・・・
 いちばん大事なことを言い忘れて最後に言ってしまった・・・
 そもそも、自分の身体の状態に注意を払うのを完全に忘れていた・・・

など、反省点を挙げれば、キリがありません。

でも、今の私の力で、とりあえずここまではやったよ、という記録を残しておいて、今後のよりよきワークショップへとつなげたいと思います。 

そもそも、このワークショップはアレクサンダー講師認定のための必須単位の1つでもあり、いわゆる「開かなければいけない」という側面もなきにしもあらず、でした。

一方で、それにもまして、私の心の中は「ワクワク」が占めていました。
それは、「二胡を楽しむ会」という名前が示すように、痛みやしんどさから解き放たれて、二胡と楽しく、ラクにつきあってほしいという気持ちがあり、このワークショップは、それを実現するための、私の小さな一歩であったからです。

(とにかく、最初の一歩を踏み出してみることが大事だと。
これはワークショップのみならす、レッスンでもブログ書きもそうですよね)
 

「ん?」「あら?」「えっ!」。みなさんの表情はさまざまです。
でも、変化が感じられなくてもいいということは、大事にしたいなあと思いました。
というのは、自分自身が、どちらかというとあまり変化を感じ取れない方だからです。

変化がないことも含め、みんな違っていい、ということです。

また、参加者の中には初対面の方もいらっしゃいましたが、そういう方々を含め、みなさん、とても積極的に発言してくださったと思います。
この雰囲気に、アレクサンダー講師見習いのたまごである私は、ほんとうに助けられました。

さらに、このワークショップ開催にあたっては、BodyChanceの先生方、トレイニーの方々のさまざまなアドバイス・励ましがあってこそ実現しました。心から御礼申し上げます。

次回は、「二胡を楽しむワークショップ~左手編」をぜひやってみたいです。

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バイクの上は居心地いいよね!

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