コンテンツ
●「はじめて」の演奏
●「迷い」がいっぱい
●自分に合った「決断」を
「はじめて」の演奏
10月の終わりに、老人ホームで演奏する機会がありました。
実は、これは私にとって初めての経験でした。
ホームでの演奏経験はあります。もうものすごく昔になりますが、いぜん、一緒に活動してくださっていた方が、つながりのあるホームでのレクリエーションの演奏に誘ってくださったことがありました。
また、一人で演奏に行ったことも、少ないですがぼちぼちあります。
ただ、「ホームで」「ひとりで」演奏に行ったことは今まで一度も無かったのでした。
演奏時間を確認し、リクエストは「唱歌と美空ひばりを」ということでしたので、それを入れたプログラムを練っていきます。
それと平行して、情報集め。
アレクサンダーの学校の同級生でホームでの演奏経験が豊富な方や、私よりたくさんの数をこなしていらっしゃる頼もしい生徒さんたちに、いろいろ尋ねて回りました。
また、80代前後の方が中心だということで、その年齢層の方々に受ける曲をネットで検索したりしました。
そして、プログラム第1稿が完成! 演奏予定曲を、グループレッスンの場を使って一曲ずつひいていきました。伴奏が2種類ある場合は、2種類ひいてみて、みなさんに聞き比べていただいたり。
自分の受け取め方とはまた違う感想をいただいたりして、いろいろな発見がありました。
この時点で、いくつかの懸念があったのです。
「迷い」がいっぱい
まずは衣装。
依頼してくださった方からは「気軽な服装でいいですよ」とのことでした。
なので、タウンにも着ていけるような、それでいてちょっとしたチャイナテイストが入っているかわいい服とかかな、というイメージでした。
ただ、そもそも普段の服がもっさりしてて、そのまま着ていけるようなものはありません。いや、あることはあったのですが、一度も着る機会が無いまま、自分が「成長」したせいで、すでに入らなくなってしまっていたのです。
手持ちの、チャイナ風の上着となんかを合わせてみようか?? いぜん、楽団で着ていたロングスカートなどもあったのですが、ちょっとちぐはぐな感じです。
じゃあ、ワンピースふうなのをネットで調達する??? いろいろ検索したのですが、チャイナ風なのはけっこうピチピチのサイズ感なものが多く、全体のサイズがちょうどでも、腰回り、腕周りなどがギリギリになることが多く、かといって、大きすぎるサイズだと、こんどは身長が低い私(150センチ)が着ると、本当にダボダボになってしまいます。
そうこうしているうちに、秋学期になって、担当の授業も増え、衣装問題を先延ばしにしているうちに、さらにプログラムにも迷いが生じてきました。
蘇州夜曲などは、戦争の記憶と結びつかないだろうか・・・。
楽器説明とか聞くより、とにかく歌って声を出した方がよいのではないだろうか・・・。
みなさんの健康状態によっては、アクティブに歌うより、目を閉じて安らげる曲のほうがよいのかも・・・。
などなど。
二胡の先生のところの勉強会で、よくホームなどのボランティア演奏をなさっている方のお話を聞いたりして、迷いは一層大きくなりました。
そして、本番まであと半月を切るあたりになりました。「そろそろ曲目を送らないと」と思っていた矢先に、改めてリクエストが届いたのです。
いくつかの曲は予定曲と重なっていましたが、そうでないものの方が多いのです。
できるだけご要望の曲も改めていれたいと、別の楽器の伴奏などがないか色々探してみましたが、どうもうまいこと見つかりません。
わあ、どうしよう・・・・
落ち着かない気分のまま、本番の日は刻一刻と近づいてきます。
自分に合った「決断」を
このままではいけない、と、とにかくこんがらがる頭を整理しました。
まずは、リクエスト第2弾にあった曲は、演奏しなれたものを1曲だけ入れることにして、あとは諦めることにしました。できるだけご要望に添いたい、という気持ちは、いったん保留することに。
自分が余裕を持って演奏することを最優先にしたのです。
そして、衣装。
「気軽な服装」じゃないと、ちょっと大げさで浮いちゃうかな、と懸念してました。
けど、以前、プロの管楽器奏者の方にうかがったお話のことを、ふと思い出したのです。
その方は、むかし気軽な場での演奏を頼まれ、ドレスだとちょっと大袈裟か、先方もラフな感じでと言ってたし…ということで、ふつうに街でも着れるスーツっぽい服装で臨んだそうです。
そしたら、演奏中には思いのほか足を動かしてて、ドレスを着ていたら足がすっぽり隠れるのでのびのびと演奏できるのに、普通のスカートだと足が気になって逆に窮屈だったと言うことで、以来、演奏ではドレスを着るようになったということでした。
気軽な服装だからといって、その分、演奏も気軽に、ラクになるとは限らないんだと知ったのです。
また、大昔に、同じ楽団の先輩と話したことも思い出しました。
そのときは、何人かのメンバーでホテルでの演奏に行ったのですが、控え室で私は「演奏がそれほどではないのに着飾るなんてなんか恥ずかしくて」というモヤモヤを打ち明けたのです。
そしたら、その方がおっしゃいました。「演奏に自信がないなら、せめて、衣装だけでもお客さんに楽しんでもらおうよ」と。
そういう記憶がいろいろよみがえってきて、さらに、演奏しにいくのにその手前の衣装でごちゃごちゃ悩んでいるのは本末転倒だ、と思って、もう浮いてもいいや、ドレス風の衣装でいっちゃおう!と開き直ったのでした。
で、本番数日前になって、係の方に「ドレス風衣装でもいいでしょうか」と尋ねたら「そちらの方が皆さん喜ばれるでしょう」とのこと。
え、それで良かったのか。返事を読んだとき、ホッとするあまり、へなへなと崩れ落ちそうになりました(あくまでも心の中のイメージですが・・・)。
その日の午前中のzoomレッスンで、「ホームで生活してる方々には“刺激”って大事。ドレスでもいいんじゃない?」って助言をくださったゆかさんの言う通りになりました。
ああもっと早く確認すればよかった、と思いつつ、着る物が決まって安心したら、やっと水を得た魚のように、頭が働き出したのです。
もう二日くらいでぶわーっといろいろ準備して、やっと当日を迎えたのでした。
ほんと、もう少し早くエンジンをかけなくてはいけなかった・・・。
今回の教訓は、「演奏」という一番大事なことに集中するためには、まずは着るものを早めに決めなければ、ということでした。
ほんで、ドレスでいいんだったら、できるだけドレスにしたほうがマシだということです。
上に述べたこと以外にも、理由があります。
私にとって、一枚でなんとかなるドレス風の衣装は、中学・高校の制服のようなものだなあと実感したのです。
学校の制服を着ていると、とりあえずなんとかサマにはなりますよね。
一方、私服だとセンスがモロに問われます。
同様に、タウンで着るようなさりげないチャイナ風の衣装で、けど人前で演奏するのに失礼にならないくらいの着こなしというのは、
私のようにファッションに自信がないニンゲンにとっては、あまりにも難易度が高すぎるのです。
だったら、ドレスっぽいものさえ着ていくと、まあそれなりの格好はつく。
私にとっては、お助けアイテムみたいなものだと思ったのでした。
※上記の記事は、2024年10月28日と11月1日の旧ツイッターのつぶやきを再編集したものです。