GWはアレクサンダーテクニークの合宿に行っていました。
しんどかったですが、とても実りある5日間でした。
たくさんの発見が、そして気づきがありました。
そのすべてはとても書き切れませんが、1つだけ、ここに書き留めておきたいと思います。
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最終日の最後のミーティングで、1つのアクティビティがありました。
それは、この合宿中にお世話になった人3人に御礼を言いに行く、御礼を言われた人は「いえいえたいしたことではありません」とか、「私の方こそ××していただいて」とかいわず、ただただそれを素直に受け取る、というものです。
何分間のシンキングタイムの間に誰に御礼を言うか考えて下さい、との宣告があり、ミーティング会場であるロビーはしばらく静寂に包まれました。
私も考えましたが、いろいろな人が浮かんできて、なかなか収集がつきません。
でも、シンキングタイムが切れるまでに、なんとか3人に絞りました。
そして行動開始。
みなが一斉に立ち上がり、ロビーには右往左往する人々で急に賑やかになりました。
その間を縫うように、私は思い浮かべた人々を一人、また一人と見つけていき、それぞれの方に御礼をいいました。
言い終わってから、あとは自分の席に戻って座りました。
喧噪の中、ぼ~っとその様子を眺めていました。
もともと知っていた人。
合宿で見知った人。
知らないけど見たことならある人。
ぜんぜん記憶にない人。
それぞれが、それぞれ感謝する人を探し、御礼を言ったり、言われたりしてます。
いぜんの私なら、その様子を見ながら
「どうせ私の所には誰も来ないんだ」とへこむのがありがちなパターンでしたが、
今は、御礼を言う、言われるという人間関係がかもしだすあたたかな雰囲気の中に、
ただただひたりながら、その様子を眺めていようと思いました。
よく見ると、御礼を言う人、言われる人のほかにも、
いろんな人がいるのが見えてきました。
私のように、ただ座っている人もいました。
そのうち、なんと私にも御礼を言いに来てくれた先生がいらっしゃいました!
(でも「ただそれを受け取る」のを忘れ、つい余計な言葉を付け加えてしまいましたが)
もしかしたら私がぼーっとしてたから声を掛けに来てくだったのかもしれないけど、
でもそのお気持ちが嬉しくて、前よりもちょっとほっこりとした気持ちになりながら
またぼーっと眺める自分に戻りました。
さらにしばらく時がすぎたあと、ふと前を見ると、
たまたま私の目の前に背中を向けて立っている人が、
合宿初日の夕食時に話しかけてくれた人だということに気づいたのです。
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最初、合宿に行くのがほんとうにイヤでした。
合宿に申し込んだ日以来、集団で過ごすこと、特に、家族やほんとうに気の置けない友人以外の人と、まる一日中、ずっと行動を共にしなければいけないことを思うたびに、憂鬱でたまりませんでした。
そして、とうとう合宿当日。
合宿所についたあと、手続きを済ませ、割り当てられた部屋に行き、ルームメートの先輩(年は私がかなり上だけど)に挨拶し、さあ夕食の時間です。
先輩は先に行きましたが、私はしばらくぐずぐずしていました。
でも、夕食を食べないわけにはいきません。私は重い腰を上げて食堂に行きました。
お金を払い、バイキング形式のおかずをひととおりトレイにとったあと、
手近な空いているテーブルに座りました。
先に座っていた3人は、あとで分かったのですが、
この合宿で卒業する方を含む、ベテランの人達でした。
簡単な挨拶代わりの会話はできたのですが、やがて3人は普段の内輪のおしゃべりに戻り、
私はそれに入るでもなく、ただただ笑顔を貼り付けて、うんうんと軽くうなづくのみでした。
これが朝昼晩と毎日続くのか、と思うと、もう帰りたくなりました。
そしたら、3人のうちのお一人が、ふと「今回、初めて合宿に来た人がけっこう多いみたいね」と、こちらを見るでもなく、おっしゃいました。
それは、私に向けられた軽いパスでした。
そのボールを受け取り、投げ返すことをきっかけに、私はおそるおそる話の輪に入っていきました。
そして、時間が来て席を離れるまで、なんとか3人と会話を続けることができたのです。
そのきっかけをつくってくれた人が、いま、たまたま私の目の前に立っています。
私は意を決して立ち上がり、その人に話しかけました。
そして「覚えてらっしゃらないかも知れませんが、初日の夕食の時に話しかけて下さって、本当にありがとうございました」と伝えました。
伝えた後、また座りました。
私はすでに3人の人に御礼を言った後だったから、これで4人目になってしまったけど、
でも別に3人に御礼を言うという指示があったからといって、
是が非でも3人に限らなくても良かったし、思いついた人全員のところに
どんどん行って御礼をいいまくるという選択肢もあったなあ、なとど思いました。
自分のあまりの融通の利かなさに、ふとおかしみもわきました。
しかし自分自身でも意外なことに、そのあと、とめどなく涙が溢れてきたのです。
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もちろん、初日の夕食後のあと、性格が180度変わって急に社交的になったわけではありません。
その後も、こころがぎくしゃくしたことは幾度もありました。
でも、あのときの自分はほんとうにほんとうに辛かったんだということに改めて気づかされました。
だからこそ、彼女のあの小さなパスが、どんなにか有難かったかということにも。
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画像は合宿所に咲いていた花です。
名前は知らないけど、なんか珍しい花なんだそうです。